3Dプリントの品質問題の多くは、湿気を吸収したフィラメントが原因だ。専用の乾燥機は市販されているが、低価格モデルは60℃までしか加熱できないものが多い。この課題に対し、MakerのMilos Rasic氏が10ドルのエアフライヤーを改造したフィラメント乾燥機を製作し、element14で公開した。Arduino UNO R4 WiFiで温度制御を行い、90℃以上の高温乾燥を実現している。
フィラメント乾燥機は、加熱と空気循環によって機能する。一部の製品は乾燥剤を使用して受動的な乾燥を強化しているが、加熱プロセスだけでもフィラメントから湿気を引き出すには十分だ。エアフライヤーは既に加熱要素とファンを備えているため、温度センサーからのフィードバックループで制御すれば、フィラメント乾燥機として機能する。
Rasic氏のアプローチは、この既存の機能を活用することだ。新たに加熱機構やファンを追加する必要がなく、制御システムを組み込むだけで目的を達成できる。
制御の中核となるのはArduino UNO R4 WiFiボードだ。このボードは、3つのリレーを介して220Vのファンとヒーターを制御する。構成は、マスターリレー1つ、ファン用リレー1つ、加熱要素用のソリッドステートリレー(SSR)1つだ。
温度監視にはDFRobot DFR0558温度センサーを使用している。このセンサーからのフィードバックに基づいて、Arduinoが加熱要素とファンをオン・オフ制御する仕組みだ。温度が設定値を下回ればヒーターをオンにし、上回ればオフにすることで、目標温度を維持する。
Rasic氏はさらに、Arduino Cloudを使用してウェブベースのユーザーインターフェースを構築した。これにより、乾燥ジョブの実行やステータス情報の確認をいつでもどこからでも行える。スマートフォンやパソコンから、現在の温度や動作状況をモニタリングできる仕組みだ。
このアプローチの大きな利点は、90℃以上の高温に対応できることにある。多くの低価格フィラメント乾燥機は60℃までしか加熱できないため、頑固な湿気を持つフィラメントには効果が限定的だ。特にナイロンやポリカーボネートといった吸湿性の高い材料では、より高い温度での乾燥が必要になる。
このプロジェクトの魅力は、部品箱にある在庫品と中古のエアフライヤーで実現できる点だ。専用のフィラメント乾燥機を購入するのではなく、手元にあるもので解決する典型的なMakerのアプローチといえる。
エアフライヤーはリサイクルショップで安価に入手でき、Arduino UNO R4 WiFiとリレー、温度センサーがあれば制御システムを構築できる。高温対応という機能面でも、市販の低価格製品を上回る性能を実現している。
詳細な製作手順はelement14のプロジェクトページで公開されており、同様の改造を行いたいMakerにとって参考になる情報源となっている。
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