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赤ちゃんの泣き声を検知してミルクを自動準備、市販の調乳機を改造

深夜2時、赤ちゃんが泣き始める。眠い目をこすりながら起き上がり、ミルクを準備する。お湯を沸かし、70℃程度に冷めるのを待ち、粉ミルクを計量して哺乳瓶に入れ、お湯を注いで振って溶かし、さらに人肌まで冷ます。その間もずっと赤ちゃんは泣いている。上の子が起きないか気になる。暗い中で作業するのは難しい。世界中の親が経験するこの状況を、エンジニアのManivannan氏は機械学習で解決しようとした。

Manivannan氏が製作した「Edge AI-based Bottle Preparation Machine」は、赤ちゃんの泣き声を検知すると自動でミルク調乳機を起動するシステムだ。Arduino Portenta H7というマイコンボード上で機械学習モデルを動かし、泣き声と部屋の環境音を識別する。クラウドへの接続は不要で、すべての処理がデバイス上で完結する。このようにマイコンなど小型デバイス上で機械学習を実行する技術は「TinyML」と呼ばれ、低消費電力でリアルタイム処理できる点が特徴だ。

ボタン1つで適温のミルクを準備する調乳機

このプロジェクトで使用しているのは、英Tommee Tippeeの「Perfect Prep」という調乳機だ。日本ではあまり馴染みがないが、欧米では広く普及している製品で、粉ミルクを入れた哺乳瓶をセットしてボタンを押すだけで、約90秒後に人肌程度(約37℃)のミルクが完成する。

通常、粉ミルクの調乳では殺菌のために70℃以上のお湯で粉を溶かし、その後赤ちゃんが飲める温度まで冷ます必要がある。Perfect Prepはこのプロセスを自動化している。まず70℃以上の熱湯を少量注いで粉ミルク中の細菌を殺菌し、次に冷水を加えて適温に調整する。親がやるのは粉ミルクを計量して哺乳瓶に入れることだけだ。

Manivannan氏はこの調乳機のスタートボタンと並列にDFRobot製のリレーモジュールを接続し、Arduino Portenta H7から制御できるようにした。ハードウェアの改造はこれだけで済む。赤ちゃんが泣き始めると自動で調乳機が起動し、親が目を覚ます頃にはミルクの準備が終わっている。

Edge Impulseでモデルをトレーニング

Manivannan氏

機械学習モデルのトレーニングには、組み込み向け機械学習の開発プラットフォーム「Edge Impulse」を使用した。Portenta H7に内蔵されたマイクで「赤ちゃんの泣き声」と「部屋の環境音」を録音し、それぞれにラベルを付けてデータセットを作成。音声の特徴を数値化し、ニューラルネットワークで2種類の音を分類できるよう学習させている。

トレーニングの結果、精度は98.2%に達した。テスト用に分離しておいた未学習のデータでは100%の正答率を記録している。

単純に泣き声を検知するだけでは誤作動の原因になる。Manivannan氏は2つのロジックを追加した。まず、泣き声が10秒以上継続した場合にのみ反応する。一瞬の音では起動しない。次に、過去2時間以内に起動していた場合はスキップする。短時間に何度も作動することを防ぐためだ。

学習済みモデルはArduinoライブラリとしてエクスポートし、Arduino IDEでカスタムロジックを追加して書き込む。プロジェクトの詳細とソースコードはHackster.ioで公開されており、Edge Impulseのプロジェクトも公開リンクから確認できる。

関連情報

Edge AI-based Bottle Preparation Machine(Hackster.io)

Edge Impulse公開プロジェクト

Arduino Blog

YouTubeデモ動画

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FabScene編集部

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