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寝る前のアイデアをスマホなしで記録、ラズパイ製ボタン式音声メモ装置

就寝前に良いアイデアが浮かぶことは多い。しかしスマホを手に取ると、メモを取るつもりがSNSを延々とスクロールしてしまい、結局眠れなくなる。かといってアイデアを無視して寝ると、翌朝には忘れている。

インドのプロダクトデザイン学生Ansh Trivedi氏はこの問題を解決するため、スクリーンレスの音声メモデバイス「Thought Catcher (TC-01)」を製作した。ボタンを押して話すだけで、音声をテキスト化してNotionデータベースに保存する仕組みだ。

TC-01の操作は極めてシンプルだ。ベッドサイドに置かれたデバイスのボタンを1回押し、アイデアや思いついたことを話す。再度ボタンを押すと短いビープ音が鳴り、記録完了を知らせる。画面もなければ通知もない。

内部では音声がテキストに変換され、Notionデータベースに自動送信される。翌朝には、カテゴライズ(アイデア/タスク/ノート)、要約タイトル、キーワード、緊急度判定、タイムスタンプが付与された状態で整理されている。半分眠った状態で話した曖昧なメモも、構造化されたデータとして残る。

Trivedi氏によれば、夜間のメンタル状態に合わせた設計が重要だったという。就寝前は情報に関わりたいのではなく、頭の中を空にしたい状態だ。スマホの明るい画面、無限の選択肢、通知、SNSの引力はすべて逆効果となる。

Raspberry Pi 5とオフライン音声認識

ハードウェアはRaspberry Pi 5をベースに、物理ボタン、マイク、ブザーで構成される。ソフトウェアにはWhisper.cppによるオフライン音声認識を採用し、プライバシーに配慮した設計となっている。

音声認識後、Pythonスクリプトが内容を解析してカテゴライズを行う。「明日〜に電話する」はタスク、「〜というアプリのアイデア」はアイデア、その他はノートとして分類される。さらに要約タイトル、関連キーワード、緊急度も自動判定する。

常時音声待機型のスマートスピーカーという選択肢もあったが、Trivedi氏はあえてボタン式を選んだ。理由はプライバシーと安心感だ。常に聞いている状態では、意図しない会話まで記録されるリスクがある。ボタンによって記録の開始と終了を明示的に制御できることで、ユーザーは安心して使える。

また、ボタンは1つだけだ。複数のボタンを配置すると学習コストが発生する。ほぼ眠りかけている状態で正しいボタンを探すのは負担になる。シンプルな1ボタン操作により、認知的負荷を最小限に抑えている。

確認ビープ音も重要な設計要素だ。視覚的なフィードバックなしでも、音による明確な完了通知があることで信頼性が生まれる。過度な刺激を避けつつ、ユーザーに安心感を与える工夫だ。

現在のプロトタイプはRaspberry Pi 5を使用しているため、サイズが大きい。今後はより小型のマイコンへの置き換え、木材を使った温かみのあるデザイン、より高度な言語理解などの改善を計画している。Trivedi氏はコードや回路図の共有にも前向きで、興味がある人へのサポートを表明している。

関連情報

TC-01 : A Bedside Thought Catcher Capturing Ideas Without Opening Your Phone

Raspberry Pi
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越智 岳人

FabScene編集長。大学卒業後、複数の業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年当時に所属していた会社でwebメディア「fabcross」の設立に参画。サイト運営と並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねるようになる。 2017年に独立、2021年にシンツウシン株式会社を設立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、企業のPR・事業開発コンサルティングやスタートアップ支援事業に携わる。 2025年にFabSceneを設立。趣味は365日働ける身体作りと平日昼間の映画鑑賞。