ソフトウェアエンジニアのShvn氏が2025年、E Ink Spectra E6ディスプレイを使用したデジタルフォトフレームの制作記録をブログで公開した。6色表示対応のE Inkディスプレイと低消費電力のESP32マイコンを組み合わせ、バッテリー駆動での長時間動作を実現している。
使用されたのはWaveshare製7.3インチのSpectra E6 E Inkディスプレイで、赤、緑、青、黄、黒、白の6色表示が可能だ。解像度は800×480ピクセル、画像更新時間は約12秒となっている。最大の特徴は画像保持に電力を必要としない点で、デジタルフォトフレーム用途に適している。
マイコンには充電回路と電源スイッチ、LiPoバッテリー用JST端子を搭載したLilyGo製ESP32C3開発ボードを採用した。8MBのPSRAMを搭載しており、画像処理には十分な容量を確保している。ディスプレイとの接続はWaveshare E-Paper Driver HATを介して行い、8ピンのJST-PH端子でESP32ボードと接続している。
ソフトウェア面では、WiFi接続、画像ダウンロード、画像処理、ディスプレイ表示、深いスリープモードでの省電力動作を実装した。Spectra E6が6色のみの表示であることから、より広い色域の表現にはディザリング処理が必要となる。Shvn氏はFloyd-Steinbergディザリングアルゴリズムを採用し、最良の結果を得られたとしている。
画像処理はESP32のファームウェア内ではなく、専用のWebサービスとしてGo言語で実装した。これによりメモリ容量の制約を回避し、ブラウザでのテスト実行も可能になった。ディザリングサービスは画像URL、解像度、色パレットをパラメータとして受け取り、ディスプレイ解像度に合わせた画像フィッティングとディザリング処理を実行する。
画像アップロード機能には独自のTelegramボットを開発した。各ユーザーにはSHA256によるユニークIDが割り当てられ、これが画像URLとして機能する。ユーザーが画像を送信すると最新の1枚のみが保持され、アップロード成功時には絵文字で反応する仕組みとなっている。
実用面での評価として、Shvn氏はSpectra E6ディスプレイの限界も指摘している。ディザリングへの依存により実効解像度が低下することや、白色が完全な白ではなくグレーに近いため、特に印刷写真と並べた場合にコントラストが不足することを挙げている。また、額縁のガラスカバーによる反射も画質に悪影響を与えるため、マットガラスの使用を提案している。
表示品質については画像の種類によって大きく左右され、色数の少ないコミックスタイルの画像は良好な結果を示すが、自然風景の写真は期待を下回る結果となった。ポートレート写真は照明とコントラストに依存するとしている。最適な視聴距離は1~2メートル以上で、この場合より大型で高価なディスプレイが必要になるという課題もある。
このプロジェクトは個人の技術実験として興味深い成果を示しているが、同時にカラーE Ink技術の限界も明確に示しているのかもしれない。