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BBQの火加減を自動制御する装置を自作、±2.8℃の精密温度管理で長時間調理をサポート

長時間の燻製料理では、温度管理が成功の鍵を握る。しかし、何時間も火加減を監視し続けるのは現実的ではない。海外のMakerが開発したのは、マイコンボード「ESP32」を使ったスモーカー用温度制御装置だ。インターネット接続機能とコンピュータ制御を組み合わせることで、市販品に匹敵する精度の自動温度管理を実現し、全設計データをオープンソースとして公開している。

この装置は、Udushu氏が2025年7月16日にRedditで発表したもので、アメリカで人気の炭火式スモーカー「Weber Smokey Mountain」向けに開発された。制御ループのチューニングにより±5°F(約±2.8℃)の温度安定性を達成し、長時間の調理でも安定した温度管理を可能にしている。

システムの中核となるのはESP32で、12Vのブロワーによる送風制御と2本のK型熱電対による温度監視を担っている。熱電対は本来スモーカー用と食材用の2系統を想定していたが、現在はスモーカー温度の監視に使用している。

温度が設定値を超えた場合には、サーボモーターがダンパードアを制御して送風を遮断する仕組みを採用している。ユーザーインターフェースには2インチLCDディスプレイとロータリーエンコーダー(プッシュボタン付き)を搭載し、目標温度の設定やシステムの起動・停止、各種設定の調整が可能だ。

特に技術的な工夫が見られるのは、低回転域でのブロワー制御だ。出力30%以下ではモーターの停止を避けるためパルスモードに切り替わり、設定温度に近づくにつれてパルス幅を短くすることで、モーター停止を防ぎながら細かな制御を実現している。

すべての部品はPETGで3Dプリントされ、ブロワーとスモーカー間には4インチHVACパイプをヒートブレークとして設置することで、プラスチック部品の過熱を防いでいる。温度プロファイリング機能も実装されているが、実際の調理では使用していないという。

市販品を買うほうが安くても、楽しいから作った

スモーカーに接続した様子

ESP32はWebサーバーとしても機能し、REST APIを通じてログの記録、温度データのプロット表示、リモート制御が可能だ。加えてインターネット経由での温度監視にも対応している。

Udushu氏は過去に組み込みファームウェア開発の経験があり、「長い間使っていなかった技術スキルを活用したかった」と開発動機を説明している。市販の類似製品が300ドル(約4万2000円)で入手できるのに対して、倍の費用をかけて自作したことにも触れ、「楽しいプロジェクトだったから」とコメントしている。

プロジェクトの全データは「smoke-mate-9002」としてGitHubで公開されており、CADファイル、ソースコード、組み立てプロセスの文書化が含まれている。

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Reddit投稿(原文)

FabScene編集部

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