Wi-Fiのための送信回路を直接動かし、マイコン1個からデジタルテレビの映像を電波で送る。「ESP32-DATV」として公開された。作ったのはSP8ESA氏で、同氏は以前にも、ESP8266の送信回路を直接動かして音声を送受信する2.4GHz帯の無線機を公開している。同氏は今回、対象のチップと送るものを変えた。
ESP32-C3は、Wi-Fiの電波を作るために、デジタルの値を電圧に変える10ビットのDACと変調回路を内蔵する。SP8ESA氏はチップのROMと、Espressifが開発環境に同梱する無線ライブラリを読み解き、公開されていない関数とレジスタを使って、このDACにプログラムから直接値を書き込む方法を見つけた。ESP32-DATVには外付けの無線部品が要らない。
映像の処理はPCが受け持つ。PCは動画を放送用の形式にまとめ、欧州で標準化された衛星デジタル放送の規格DVB-Sに沿って符号化してから、USBでESP32-C3に送る。ESP32-C3は受け取ったデータを電波の波形に整え、2.4GHz帯で送り出す。
10月3日に公開された最初の版で、同氏は実際に電波を出し、別の作者による受信ソフトで10秒間に6003個のパケットを誤りなく受け取った。640×360画素の映像と音声も崩れなかったという。同氏はその後、後継規格のDVB-S2にも対応させた。同氏によると、一度に多くの情報を載せる変調方式でも、10月9日の試験では2通りの速度で映像データを欠落なく受信できた。
使うボードは、USB端子がチップに直接つながったESP32-C3の基板で、READMEは開発ボードや小型の「SuperMini」でよいとする。PCはLinuxを使う。ライセンスはPolyForm Noncommercial 1.0.0で、趣味やアマチュア無線、研究、教育などの非営利の用途に限って使える。
出力にはフィルターがない。同氏は、送信には周波数に応じたアマチュア無線の免許が要ると断っている。ファームウェアは2300〜2450MHzの外では送信しない。日本国内で送信できるかは、電波法上の扱いを確かめる必要がある。免許を持ち、2.4GHz帯でデジタルテレビを試したい人なら、手持ちのボードとPCで組める構成だろう。