北向きの部屋や谷間の家では、冬場に日光がほとんど入らないことがある。Redditユーザーの Hungry_Preference107氏は、ESP32-S3で制御する2軸ヘリオスタット(太陽追尾鏡)を製作し、娘のリビングに太陽光を反射させるシステムのプロトタイプを完成させた。
ヘリオスタットは太陽の動きを追尾し、反射光を一定の場所に当て続ける装置だ。ノルウェーのRjukanでは、冬季に日光が届かない谷間の村に巨大なヘリオスタットを設置して話題になった。Hungry_Preference107氏はこの事例に触発され、個人で製作できる規模のシステムを設計した。
プロトタイプでは20cmのミラーを使い、2本のリニアアクチュエーターで上下と東西の2軸を調整する。フレームは20×20mmのアルミプロファイルと3Dプリント製のジョイントで構成されている。3DモデルはOnShapeで公開されており、ソースコードもGitHubから入手できる。
太陽の位置はESP32のWi-Fi機能を使い、天文API(ipgeolocation.io)から取得する。GPS座標に基づいた太陽の方位角と高度を1分ごとに取得し、ターゲットの位置と合わせてミラーの角度を計算する。太陽は1分間に0.3〜0.5°しか動かないため、アクチュエーターは50ミリ秒のパルスを10% PWM(約2.5V)で与え、約0.1°刻みの微小ステップで動かす。
ミラーの実際の角度はWinMotion製のIMU「SINDT-485」で計測する。RS485 Modbus RTUで通信し、0.001°の分解能を持つ。60ユーロの部品としては驚くほど高精度だ。カルマンフィルターなどの融合アルゴリズムを内蔵している。
コントローラーにはErqos製の「EQSP32」を採用した。RS485ドライバーを内蔵し、16系統の出力は各1AまでのPWM制御に対応する。アクチュエーターは起動時に最大2A程度を消費するため、4出力を並列にして余裕を持たせた。モーターの回転方向はDPDTリレーで切り替える。24V電源、コントローラー、リレーはすべてDINレールマウント対応で、防水キャビネットに収めている。
ソフトウェアは95%をAIで作成した。モーター制御、RS485経由のIMU読み取り、API呼び出し、ミラー角度計算と、機能ごとに検証しながら段階的に統合したという。
1時間のタイムラプス映像では、固定ミラーの反射光が約2m移動したのに対し、追尾ミラーは風の影響で多少揺れながらもターゲットに留まり続けた。5m先の壁に対して数センチの精度を維持している。
プロトタイプの部品代は約360ユーロ(約5万6000円)。最終版ではソーラートラッカー用マウントと1.0×1.75mのミラーを追加し、3.5平方メートルのシステムで約1000ユーロ(約15万6000円)を見込む。2026年春の設置を予定している。
Eternal Sunshine: ESP32-Controlled Heliostat Prototype Working(Reddit / r/esp32)