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フィルター交換時期を自動判定するVOC空気清浄機を自作――デュアルセンサーで除去効率を学習

活性炭フィルターの交換時期を見極めるのは難しい。メーカー推奨の使用時間を過ぎても効果が残っていることもあれば、早く劣化していることもある。ハードウェアエンジニアのApollo Timbers氏が、フィルターの前後にVOC(揮発性有機化合物)センサーを配置し、除去効率をリアルタイムで計測する空気清浄機を自作した。

きっかけは光造形3Dプリンター「Elegoo Mars 5」の導入だった。レジンから発生するVOC対策として市販の空気清浄機を検討したが、フィルターの寿命を正確に把握できる製品がなかった。そこで、2週間で自作のプロトタイプを完成させた。

単純な比率では効率を測れない

デバイスはESP32-C6をベースに、SensirionのSGP30センサーを2個搭載している。1個はフィルター入口側、もう1個は出口側に配置し、VOC濃度の差分から除去効率を算出する。320×172ピクセルのカラーディスプレイに現在の効率やフィルター残寿命の予測値を表示し、BLE経由でスマートフォンアプリからも監視できる。

開発で苦労したのは効率計算のロジックだった。最初は入口と出口のVOC濃度を単純に比較していたが、部屋のベースライン空気品質を考慮しないと正確な値が出ないことが分かった。部屋の空気がすでにきれいな場合や、逆に汚れている場合、単純な比率は実際のフィルター性能を反映しない。ベースラインを学習し、除去可能なVOC量を基準に効率を計算するよう改良した結果、数値が実際のフィルター性能と一致するようになった。

VOCセンサー特有の課題もあった。SGP30は同じ型番でも個体差があり、同じ空気を測定しても異なる値を返す。ファームウェアにはキャリブレーション機能を実装した。両センサーをきれいな空気の中に並べてボタンを6秒間長押しすると、5分間サンプリングしてオフセットとスケールファクターを計算、不揮発性メモリに保存する。

センサーのドリフト(経時的なずれ)への対策も必要だった。VOCセンサーは数時間にわたって誤った値を出し続けることがある。ドリフト検出と補正のロジックを追加し、生の測定値をそのまま信用しない設計にした。

ファンは必要なときだけ動作

自動モードではVOCが検出されたときだけファンが動作する。3Dプリント中はフル稼働し、待機中は停止することで、フィルターの寿命を延ばせる。使用パターンを学習し、フィルターの残り寿命を予測する機能も備える。

筐体は3Dプリンターで造形した。最新バージョンでは電子部品ベイの形状を改良し、カスタム基板を1mmのアクリルカバー越しに見せるデザインにした。フィルターは交換しやすい構造で、ハニカム状のプレフィルター、1.5〜2カップの活性炭、カーボンマットのスパイラルを黒い紙で包んでいる。

スマートフォンアプリはFlutterで開発した。最大6台のフィルターを管理でき、VOC濃度や温湿度のリアルタイムグラフ、CSVエクスポート機能を備える。開発者にとって初めてのFlutterアプリだったが、先にnRF Connectでファームウェアのプロトコルを検証してから着手したことで、デバッグの手戻りを減らせたという。

プロジェクトはHackaday.ioで公開されている。

関連情報

A learning VOC Filter for the lab(Hackaday.io)

FabScene編集部

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