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USB-シリアル変換IC不要、 ESP32-S3開発ボードを10個の部品で自作する方法

YouTubeチャンネル「atomic14」が、ESP32-S3開発ボードを自作する方法を解説する動画とプロジェクトファイルを公開した。複雑に思える開発ボードの自作が、実は意外に簡単であることを示している。

動画では、ESP32-S3モジュールのデータシートを参照しながら、最小限の部品構成で動作する開発ボードの設計方法を解説。ESP32-S3の特徴であるネイティブUSBサポートを活用し、追加のUSB-シリアル変換チップを使わずに、ファームウェアのアップロードやシリアル通信、さらにはデバッグまでUSB経由で実行できる設計となっている。

必要最小限の部品構成

回路構成は極めてシンプルだ。ESP32-S3 WROOMモジュール、USB Type-Cコネクタ、3.3V電圧レギュレータ「LD1117」、デカップリングコンデンサ、そして動作確認用のLED3個という最小構成。データシートで推奨される外部クリスタルは、ディープスリープ時の正確なタイミングが不要な場合は省略できるという。

USB Type-Cコネクタには、CC1とCC2ピンにそれぞれ5.1kΩのプルダウン抵抗を接続。これにより接続先のデバイスに電源供給を要求する。データラインのD+とD-は、ESP32-S3のピン19と20に直接接続される。

電源回路には、多くの開発ボードで採用されるAMS1117の代わりにLD1117を選択。AMS1117はタンタルコンデンサが推奨されるのに対し、LD1117はセラミックコンデンサで問題なく動作するため、部品選定が簡単になる。

KiCadでの設計とPCB製造

動画では、KiCadを使った回路図作成からPCBレイアウトまでの全工程を実演。ExpressifのKiCadライブラリを使用することで、ESP32-S3モジュールのシンボルやフットプリント、3Dモデルが簡単に利用できる。また、LCSCから部品情報を取得できる「EasyEDA to KiCad」ツールも活用している。

PCBレイアウトでは、電源ラインを太く設定(0.4mm)し、USB信号線は差動ペアとして配線。グランドプレーンとビアでのスティッチングにより、ノイズ対策も施されている。開発ボードとしてすべてのGPIOピンをヘッダーに引き出しているが、USBを使用する場合のD+/D-ピンなど、使用を避けるべきピンについても言及している。

オープンソースプロジェクトとして公開

プロジェクトはGitHubでオープンソースとして公開されており、回路図、PCBデザインファイル、3Dモデル(STEPファイル)がダウンロード可能。KiCadのCIも設定されており、継続的な品質管理も行われている。

ボードの幅は一般的なブレッドボードには収まらない設計だが、複数のブレッドボードを接続することで対応できる。あえて小型化を追求せず、はんだ付けやデバッグのしやすさを優先した設計となっている。

動画の最後では、設計したPCBをPCBWayに発注する過程も紹介。ガーバーファイルの生成から発注まで、実際の手順を詳しく解説している。黒色の基板に白色のシルクスクリーンを選択し、5枚で5ドルという価格で製造可能であることも示されている。

関連情報

GitHub – atomic14/basic-esp32s3-dev-board

FabScene編集部

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