2021年にLEGOが発売したタイプライターセットは、キーを押すと活字棒が動き、キャリッジがスライドするなど本物の動きを忠実に再現していた。ただし、実際に文字を打つことはできなかった。YouTubeチャンネル「Koenkun Bricks」を運営するKoenkun氏は、LEGOブロックだけで本当に文字が打てるタイプライターを3か月かけて設計、製作した。
最大の課題は「インクが使えない」ことだった。本物のタイプライターは活字棒がインクリボン越しに紙を叩いて印字する。しかしLEGOの文字タイルは表面が平らで、インクによる転写は不可能だ。Koenkun氏はまったく異なるアプローチを選んだ。文字が印刷された丸型タイルを回転防止用の四角いプレートに取り付け、白い大型プレート(=用紙)の上に1文字ずつ物理的にはめ込む方式だ。
仕組みはこうなっている。キーを押すと、背面のレバーが持ち上がり、重力式マガジンから文字タイルが1枚排出される。タイルはスライドを滑り降り、アーチ型パーツで90度回転して正しい向きに整列する。同時にキー操作がゴムバンドを引き、キーを離した瞬間にプッシャーが文字タイルを用紙に押し込む。キャリッジは1文字分ずつ自動で横に移動し、1行を打ち終えたら手動でリールを回して用紙を上方向に送る。
26個のキーそれぞれに独立したマガジンと排出機構が必要なため、キー配列の干渉が大きな問題だった。隣接するキーのレバーが互いの機構を誤作動させてしまう。キーの間隔を広げるとタイプライター全体が巨大化する。Koenkun氏は上段のキーを若干後方に、下段を前方にずらすことで、サイズを維持したまま干渉を解消した。
完成した機体で実際にLEGO宛ての手紙を打つ様子が動画で公開されている。文字タイルが時おり回転して向きがずれる、押し込みが弱いと定着しないといった問題は残るが、動力源なし、電子部品なし、使うのはLEGOブロックとゴムバンドだけで文字入力を成立させた設計は、ユニークな一例だろう。