メイカーコミュニティサイトHackster.ioで、GPS信号が利用できない環境でも自律飛行が可能なドローンシステムの詳細な構築手順が公開された。このシステムは、NVIDIA Jetson Orin NanoとIntel RealSense D435iカメラを組み合わせ、Visual SLAM(VSLAM)技術により、都市部の高層ビル間や地下トンネル、密林などGPS信号が届かない場所でもリアルタイムで位置推定と地図作成を行う。
プロジェクトは、Isaac ROS VSLAMフレームワーク、MAVROS、PX4フライトスタックを統合した構成となっている。視覚慣性データを融合し、Jetson Orin Nanoのエッジコンピューティング機能を活用することで、GPSに依存しない自律航行を実現している。システムはExtended Kalman Filter(EKF)を使用してVisual-Inertial Odometry(VIO)とフライトコントローラーのIMUデータを融合し、局所的な位置推定を行う。
システムの精度向上には、Intel RealSense D435iカメラの内蔵IMUの較正が重要な要素となる。IMUは工場出荷時に較正されているが、より正確な測定のため追加較正が推奨されている。較正プロセスでは、カメラを6つの異なる方向(正面上向き、USBケーブル上向き、逆さま、USBケーブル下向き、視線方向下向き、視線方向上向き)に配置し、専用ツールで較正データを収集する。
また、IMUパラメーター推定では、Allan Varianceを使用して加速度計とジャイロスコープのノイズとバイアス不安定性を推定する。この作業には最低3時間の静的データ収集が必要で、収集したデータはROS2フレームワーク内のallan_ros2ツールで解析される。推定されたパラメーターはVSLAMパイプラインに組み込まれ、システム全体の精度向上に寄与する。
ハードウェア構成では、Jetson Orin NanoとPX4フライトコントローラー(v1.15.4)間の通信にTELEM2ポートを使用し、USB-UART変換器経由でのシリアル通信を推奨している。Jetson Orin NanoのGPIOピンでの直接通信も理論上可能だが、データリンクのノイズ問題によりUSB-UART変換器の使用が実用的とされている。
PX4パラメーター設定では、GPS無しでの視覚位置推定を有効にするため、EKF2_HGT_REF=Vision、EKF2_GPS_CTRL=0、EKF2_BARO_CTRL=Disabledなど複数のパラメーターを変更する必要がある。また、TELEM2ポート経由での通信のため、MAV_1_CONFIG=TELEM2、SER_TEL2_BAUD=921600などの設定も必要だ。
フライトデモでは、四角形、円形、8の字、らせんなど複数の飛行パターンが用意されており、OFFBoardモードで自律飛行を実行できる。システムの動作確認にはMAVProxyを使用してMAVLink通信をテストし、RVizによる可視化も可能となっている。