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青緑色に光る真空管時計を個人が開発、旧ソ連製VFDチューブ6本を使用

レトロな青緑色の発光が特徴的な真空蛍光ディスプレイ(VFD)チューブ。あるMakerが、旧ソ連製のIV-3チューブ6本を使った時計を製作した。VFDについて何も知らない状態から始め、回路設計から基板製造、プログラミングまで1カ月で完成させ、設計データを公開している。

GitHubユーザー名adricom231氏が、旧ソ連製のIV-3 VFDチューブ6本を使用した時計を製作し、2025年11月16日にRedditのESP32コミュニティで公開した。VFDチューブについて何も知らない状態から始め、設計から完成まで1カ月で完成させたという。

VFDチューブは一般的に並列接続してマルチプレックス制御するが、この設計では各チューブのセグメントごとに独立したハイサイドスイッチを設け、静的点灯させる方式を採用した。adricom231氏によると、チューブの寿命を延ばすことと、制御の簡素化を目的としたという。

制御には74HC595シフトレジスタを使用し、わずか3本のGPIOピンで全セグメントを制御できるようにした。データをシフトレジスタに送り込み、ラッチを開くと該当セグメントが点灯する仕組みだ。ハイサイドスイッチにはMIC2981/82YWM ICを採用した。ULMシリーズICでの不具合経験から、より信頼性の高いこのICを選択したという。

コントローラーにはSeeed Studio XIAO ESP32S3を使用。電源供給にはAdafruit USB-Cトリガーボードで5Vを取得し、2つのDC-DCコンバータでVFDチューブに必要な30V(グリッドとセグメント用)と1V(フィラメント用)を生成した。

画像出典元:Reddit

製作過程で最大の課題となったのは、PCB設計用のライブラリが存在しなかったことだ。Fusion 360やEagleにIV-3チューブのライブラリがなかったため、Nick De’Smithが公開している計算機ツールを使用してEagle用のフットプリントを生成し、それをFusionにエクスポートすることで独自ライブラリを作成した。

基板製造はJLCPCBに発注し、ICはTMEとBotlandから購入した。組み立て後にいくつかの設計上の問題が判明した。使用したGPIOピンの1つがESP32の起動シーケンスで使われるピンだったため、基板のトレースをカットしてGPIO 3からGPIO 44へ配線し直す必要があった。またチューブの足を挿入する穴が狭すぎる設計となっており、組み立てに苦労したという。

adricom231氏はこれが初めてのPCB設計だったが、動作する製品を完成させた。GitHubには回路図データとガーバーファイル、専用ライブラリが公開されており、同様の時計を製作したい人が利用できる。ただし設計上の問題点も記載されているため、製作する場合は修正が必要となる。

関連情報

IV-3 Clock(GitHub)

FabScene編集部

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