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手のひらサイズで映画も音楽も楽しめる、ESP32-S3製超小型メディアサーバーを制作

旅行先やキャンプ場で自分のコンテンツライブラリを持ち歩ける時代が来た。Jackson Studner氏が開発した「Jcorp Nomad」は、ESP32-S3マイコンボードを使用したポケットサイズのオフラインメディアサーバーで、インターネット接続なしに映画、音楽、書籍、テレビ番組をストリーミング配信できる。

Jcorp Nomadは、従来のメディアサーバーが抱える電力消費、コスト、発熱の課題を解決するために設計された。開発者のStudner氏は家庭でJellyfinサーバーを運用していた経験から、その機能を携帯可能な形で再現することを目指した。従来の小型サーバー構築では、Raspberry Pi 4などの単板コンピューターに電源バンクやUSBストレージを組み合わせる必要があり、コストと消費電力が課題となっていた。

Jcorp Nomadは、Waveshare製ESP32-S3開発ボード(1.47インチLCD版)とFAT32フォーマットのmicroSDカード(推奨64GB)という極めてシンプルな構成で動作する。デバイス自体がWi-Fiホットスポット「Jcorp_Nomad」を作成し、接続したデバイスはキャプティブポータル機能により自動的にメディアインターフェースにリダイレクトされる。

対応フォーマットは動画(.mp4)、音声(.mp3)、書籍(.pdf)、カバー画像(.jpg)で、同時に最大4つの動画ストリームの配信テストに成功している。アプリのインストールは不要で、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンのブラウザーから直接アクセスできる。

ファイル構成は直感的で、SDカード内の「Movies」「Shows」「Books」「Music」フォルダーに対応するコンテンツを配置するだけで自動認識される。テレビ番組ではシーズンやエピソード別の階層構造にも対応しており、カバー画像を同名のJPEGファイルで用意すれば視覚的なライブラリ管理も可能だ。

プロジェクト全体がCreative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0ライセンスの下で公開されており、非商用利用であれば自由に改変・再配布できる。GitHubリポジトリにはArduino用ファームウェア、HTML/CSS/JavaScriptで構築されたウェブインターフェース、3Dプリンター用ケースファイル(STL)が含まれている。

Wi-Fiネットワーク名やパスワード、ブランディング要素の変更は設定ファイルの編集で対応でき、メニュー構成やセクションの追加・削除もHTMLファイルの修正で可能だ。1.47インチディスプレイのユーザーインターフェースは、無料版のSquareLine Studioで編集できる。

Studner氏は将来的な機能拡張として、オフラインGPSマップサーバー、HTML5ゲーム対応、オーディオブック機能の強化、USB転送機能、DLNA対応などを構想している。特にUSB転送機能では、SDカードを取り外すことなくファイルのドラッグ&ドロップでコンテンツを追加できる機能の搭載を目指している。

関連情報

Jcorp Nomad GitHubリポジトリ
Jcorp Nomad製作ガイド(Instructables)

FabScene編集部

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