「Raspberry Pi Compute Module 5」(CM5)用の超小型キャリアボード「Argo」が、オープンソースプロジェクトとしてGitHubで公開された。開発者のAmountOk3836氏が2025年8月に発表したもので、従来のキャリアボードにはない統合バッテリー管理機能を搭載している点が特徴だ。
Argoは、Waveshare Nanoシリーズや「CM5 Minima」などの既存小型ボードにインスパイアされて開発された。最大の特徴は、BQ25895チップを使用した統合バッテリーマネジメントシステム(BMS)を内蔵していることで、バッテリーまたはUSB-C経由でCM5に最大3Aの5V電源を供給できる。これにより、CM5を3GHzでオーバークロックした場合の8W~11Wの消費電力にも対応し、PCIeコネクタ向けに約5Wの電力を確保できるという。
メインボードには、CM5接続用の100pinコネクタ2基のほか、映像出力用のMicro-HDMIポート、カメラ・ディスプレイ接続用のMIPI-DSI/CSIコネクタ2基、PCIe接続用のFPCコネクタを装備している。USB-Cポートは2つ搭載し、1つは電源供給・フラッシュ用(USB 2.0)、もう1つは通常のUSB 3.0として機能する。
さらに、同じフットプリントで動作するM.2 M-Key対応のSSDキャリアボードも別途開発されており、低消費電力NVMe SSDとの組み合わせで安定動作を確認しているという。
ただし、初回プロトタイプには課題も残っている。最も大きな問題は、充電器を取り外した際にBQ25895の40msの電圧降下により、Raspberry Piがシャットダウンしてしまうことだ。開発者は次期バージョンで独立したブーストコンバータを追加することで、この問題の解決を予定している。また、電源系統のUSB-C 3.0にも問題があり、データ通信は理論上動作するが、次期リビジョンでの修正を待つ必要がある。
一方で、Micro-HDMIポートとDPHY(Display Physical Layer)ブレークアウトは正常に動作しており、ディスプレイやカメラとの接続に問題はないという。
プロジェクトは、OSHWLabがPCBA(Printed Circuit Board Assembly)制作をスポンサーし、HackClubがツールや材料費をサポートしている。開発者は大学生で、コミュニティの支援により実現したプロジェクトとなっている。メインボード5枚とSSDボード3枚の制作費用は無償提供され、送料・税金57.80ドル(約8400円)のみが実費として発生した。
現在、GitHubでハードウェア設計データとドキュメントが公開されており、誰でも設計を参照・改良できる。開発者は今後の改良と量産化の可能性についても言及しており、関心の高さと次期リビジョンの完成度次第では製品化も検討するとしている。