アナログレコードには特有の問題がある。再生するたびに盤面が少しずつ摩耗し、手に入らない盤はもう買い直せない。ならば一度だけ録音して、あとはデジタルで聴けばいい。そんな発想から生まれたのが「vinyl-airplay」だ。製作者のTemporary_File_3198氏は、ラズパイとUSBオーディオインターフェース(Focusrite Scarlett 2i2)を組み合わせたビニールジュークボックスをMITライセンスで公開した。
仕組みはシンプルだ。レコードに針を落とすと、Chromaprintによるオーディオフィンガープリントがローカルデータベースと照合して盤を自動認識する。同時にアルバム片面を通しで録音してFLACファイルとして保存し、無音区間の検出でトラック分割も自動で行う。一度教え込めば次回からは物理的なレコードを使わずにFLACを再生できる。
録音した音源はAirPlay(RAOP)・Bluetooth(A2DP)・ブラウザの3経路でストリーミングできる。AirPlayは複数スピーカーへの同時配信に対応しており、10.1インチのタッチスクリーンに表示されるアルバムカバー一覧から好きな盤を選べる。スクリーンを持たない場合はスマートフォンやPCのブラウザからも同じUIを操作できる。
オーディオパイプラインはUSBインターフェースから16ビット/44.1kHzで取り込んだPCMをリアルタイムのEQ処理(バス・トレブルのシェルビングフィルター)を通してから出力する設計だ。AirPlayとローカル出力は処理後のPCMをそのまま送り届けるため音質的な劣化は最小限に抑えられる。Bluetooth経由はSBCエンコードが加わるため、より忠実度を求める場合はAirPlayの利用が推奨される。
ハードウェアはラズパイ5(8GB)・NVMe SSD(FLAC保管用)・タッチスクリーンが推奨構成だが、クラス準拠のUSB DACを持つUSBオーディオインターフェースであれば代替品でも動作する。インストールは1行のシェルスクリプトで自動化されており、Discogs連携でアルバムのトラック情報やアートワークも取得できる。