朝食の卵料理で手が汚れることに10年間悩み続けたエンジニア系YouTuber Shane Wighton氏が、電子部品を一切使わない機械式の卵割り装置を自作した。ハンドルを回すだけで卵に傷をつけ、割って、中身を取り出し、殻を排出するまでの全工程が自動で行われる複雑な装置となっている。
Wighton氏は卵を割る際に毎回手に卵が付着することに悩んでおり、手で持てるサイズで、電子部品やソフトウェアを使わない純粋に機械的な解決策を目指した。最終的には機械式コンピューターと呼べるほど複雑な装置となったが、すべて歯車や回転部品などの機械的な仕組みだけで動作する。
この装置は卵の割れやすい特性を巧みに利用している。ガラスに傷をつけてから力を加えると傷に沿ってきれいに割れるように、卵の表面にも予め細い傷をつけてから衝撃を与えることで、きれいに真っ二つに割ることができる。
卵を固定するために特別に設計されたゴム製の挟み具を開発した。3Dプリンターで作った芯の周りにシリコンゴムを流し込んで一体化させ、大小様々な卵のサイズに対応できる柔軟性を持たせている。同時に、卵の薄い内膜を破るのに必要な強い力も発揮できるよう、内部に特殊な構造を組み込んでいる。
装置の動作は、まず卵を両側から挟んで固定し、回転させながら表面に傷をつける。次に小さなハンマーでその傷を叩いて卵にひびを入れ、最後に挟み具を下に向けて回転させることで中身を取り出し、圧縮空気で殻を吹き飛ばす流れとなっている。
装置の最も複雑な部分は、ハンドルを回すだけでこれらの作業を順番通りに実行させる制御の仕組みだ。コンピューターのプログラムのような複雑な手順を、すべて歯車や回転する円盤、カムと呼ばれる特殊な形状の部品を組み合わせて機械的に再現している。
メインのハンドルに連動して回転する「プログラム円盤」が、各工程のタイミングを制御する。この円盤の回転位置に応じて、卵に傷をつける刃を押し付けたり、ハンマーを作動させたり、挟み具を回転させたりする仕組みとなっている。まるで4行程度のコンピュータープログラムを機械部品だけで再現したような構造だ。
部品の多くは3Dプリンターで製作されているが、精密な動作が必要な刃の部分などは専用の加工機械で仕上げている。特に卵に傷をつける刃は、あらゆる卵の形に対応できるよう精密に設計され、5軸制御の高度な加工機械で製作された。
当初は機械的なバネを使って殻を押し出す予定だったが、最終的には圧縮空気を使う方式に変更した。ゴム製の挟み具が密閉性を持つ特性を利用し、背後から空気を送り込むことで殻を勢いよく排出できるようになっている。
Wighton氏の妻による評価では「巨大で複雑で醜い」として10点中3点の評価を受けたが、Wighton氏自身は「美しい」と反論している。
Wighton氏は機械工学の学士号とコンピューターサイエンスの修士号を持つエンジニアで、YouTubeチャンネル「Stuff Made Here」で創造的な発明を紹介している。チャンネル登録者数は450万人を超え、バスケットボールが必ず入るゴール装置や髪を切るロボットなどの発明で知られている。