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バイオリンのように弾ける電子楽器「Stradex」、米大学生が考案し、設計図を無料公開

米ノースウェスタン大学で電子工学を学ぶBrady Lin氏が、バイオリンと同じ感覚で演奏できる電子楽器「Stradex」を開発し、その設計図や作り方をインターネット上で無料公開した。3Dプリンターがあれば誰でも製作でき、ピアノやギターなどあらゆる楽器の音を出すことができる。

4年越しに完成した夢の楽器

Lin氏がバイオリン型電子楽器の開発を始めたのは約4年前。「バイオリンを弾ける人なら誰でも直感的に演奏できる電子楽器を作りたい」という思いからだった。当時の試作品はゲーム音楽のような電子音しか出せず、バイオリン特有の滑らかな音の変化も表現できなかった。

今回完成した「Stradex」では、これらの問題をすべて解決。最大の特徴は、指で押さえる位置によって音程が連続的に変化する仕組み。バイオリンで弦を指で滑らせて音を上下させる「グリッサンド」や、音を震わせる「ビブラート」といった表現も可能になった。

左手で音程を決め、右手で4つのボタンを押して音を出す仕組みは、実際のバイオリンと同じ。ボタンを押す強さで音量も調整でき、優しく押せば小さな音、強く押せば大きな音が出る。Lin氏は「ボタンのクリック感にもこだわり、1万回以上押しても壊れないよう30回以上試作を重ねた」と開発の苦労を語っている。さらに便利な機能として、つまみを回すだけで楽器全体の音の高さを変更でき、高い音から低い音まで幅広い音域で演奏できる。

Stradexの頭脳部分には、小型コンピューター「Raspberry Pi Pico 2」を使用。この楽器の最大の魅力は、パソコンと接続することで、ピアノ、ギター、トランペット、ドラムなど、あらゆる楽器の音を出すことができる点だ。音楽制作ソフトと組み合わせれば、プロのスタジオで使うような高品質な音源も利用できる。

特に注目すべきは、左手の指の位置を約3万段階で検出できるセンサー。これにより、音程を滑らかに変化させることができ、実際のバイオリンと同じような表現力豊かな演奏が可能になった。大学でロボット工学を研究するLin氏ならではの技術力が光る部分だ。

作り方と部品をすべて無料公開

Lin氏は「多くの人にStradexを楽しんでもらいたい」という思いから、設計図や作り方をGitHub(ソースコード共有サイト)で完全無料公開している。主な必要部品は、Raspberry Pi Pico 2(約1500円)、各種センサー、ボタン、抵抗器など。総額1万円程度で材料が揃う。

製作には3Dプリンターが必要だが、最近では個人でも所有する人が増えており、図書館や工作スペースで利用できる場合もある。本体の一部にアクリル板を使用する箇所があるが、これも3Dプリンターで代替可能。組み立て方法も詳しく説明されており、電子工作の経験がある人なら製作できるレベルだという。

Lin氏はこのプロジェクトを紹介するYouTube動画も公開。「これが初めて本格的に作ったYouTube動画」と話しているが、大学ではロボット工学の研究に携わる傍ら、アカペラグループで歌ったり、ボート部で活動したりと多才な一面も。チャンネル登録者数が1000人を超えたら完成品をプレゼントすることも検討しているという。

関連情報

Stradex1 – GitHub

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FabScene編集部

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