Wi-Fiルーターを、電波の様子を広い範囲で観測する受信機に変えるソフトウェア「W1700K SDR」が、2026年10月にGitHubで公開された。対象はGemtek製のWi-Fi 7ルーター「W1700K」だ。作ったのはh0m3us3r氏で、同氏は9月にも、ESP32-S3の無線回路で電波を受信する「eSpDR」を公開している。
SDR(ソフトウェア無線)は、受けた電波をデジタルの数値に変え、その後の処理をソフトウェアに任せる仕組みだ。W1700K SDRは、ルーターに載るMediaTekの無線チップ「MT7996」から、電波を変えた数値を通信の処理に回さず直接取り出す。
受信できるのは2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの帯域で、Wi-Fiのチャンネルに関係なく任意の周波数に合わせられる。記録の速さは1秒あたり最大3億2000万回で、2.4GHz帯の全体を一度に見渡せる。ルーターは10ギガビットのLAN端子からパソコンへデータを送り、パソコンはブラウザー上に周波数ごとの電波の強さと、その時間変化を毎秒100回描く。画面には、Wi-Fiの通信の電波と、周波数を切り替えながら短く出る電波が並んで映る。
同氏は、MediaTekのファームウェアを一切使っていない。まず純正のファームウェアが電源投入から無線回路を立ち上げる手順を、69回の起動にわたって記録した。そのうえで同氏は、受信に要る初期化と較正だけを選び、チップ内部の設定値への書き込みを1つずつ自分のコードで書き直した。無線チップは電源投入から約2秒で受信できる状態になる。
同氏は送信のための較正を省き、送信の経路を切ったままにした。同氏の説明によると、純正のファームウェアは起動時に最大出力の電波を短く出すが、W1700K SDRの起動中に5GHz帯の周波数を1つ監視しても電波は観測されなかった。
インストールでは、純正のOSを置き換える前に、ルーターの記憶装置の中身をパソコンへ写す。写しを書き戻せば、ルーターは純正の状態に戻る。
試すには、W1700KかW1700K2、内部のシリアル端子につなぐ3.3VのUSBシリアル変換器、10ギガビットのLANを備えたパソコンが要る。ライセンスは大半がMITで、Linuxのドライバーなどの一部はGPLなどだ。