中国の江南大学の研究チームが、防カビ特性と振動遮断性能を兼ね備えた3Dプリント製シリコーンゴムラティス構造体の開発を2026年2月に発表した。六方晶窒化ホウ素(hBN)を添加したシリコーンゴム複合インクを使い、ダイレクトインクライティング(DIW)方式で積層造形したもので、船舶搭載機器の保護を主な用途として想定している。論文は学術誌「Advanced Composites and Hybrid Materials」に掲載された。
hBN添加量を5重量%とした複合ラティスは、ASTM G21規格の試験で28日間の培養後もカビの被覆率が0.8%未満に抑えられた。防カビ機能は2段階の仕組みで発揮される。まずhBNがシリコーンゴム表面の疎水性を高め、水接触角を純粋なシリコーンゴムの106°からラティス構造との相乗効果で124°まで引き上げる。これにより水を介したカビ胞子の付着を物理的に遮断する。続いて分子レベルの作用として、hBNナノシートのホウ素端部が活性酸素種(ROS)を生成してカビ細胞に酸化ストレスを与えるとともに、ナノシートそのものがカビ細胞壁を機械的に破壊する。
振動遮断性能については、ランダム振動試験でX・Y方向の遮断効率が最大92.5%に達した。格子構造の圧縮時に単位格子が弾性座屈することで「ゼロ剛性プラトー」と呼ばれる低剛性領域が現れ、入力振動を効率的に吸収する。また10,000回の繰り返し圧縮試験(最大ひずみ70%)後も応力保持率が90%以上を維持し、長期耐久性も確認されている。さらに-20℃・150℃・湿度80%という過酷な条件下でも振動遮断効率は80%以上を保った。
印刷パラメーターは押出圧力160kPa・印刷速度10mm/sが最適とされ、直径250μmのフィラメントが安定して積層できる。hBN含有量は1〜5重量%の範囲が適切で、5重量%を超えると粘度が高くなりすぎてノズル詰まりが起きる。