ドイツのボン大学コンピュータサイエンス研究所の自律知能システム(AIS)グループが、オープンソースの人型ロボット「AGILOped」を開発し、設計ファイルを公開した。身長110cm、重量14.5kgと6歳児程度のサイズながら、歩行・ジャンプ・衝撃緩和・起き上がり動作を実行できる動的能力を持つ。
AGILOpedは高性能と入手しやすさのギャップを埋めることを目標として設計された。従来の人型ロボットの多くはクローズソースであるか、高額な購入・保守費用を要するという課題があった。研究チームは、3Dプリンターと市販部品、基本的な工具のみでロボットを構築可能にすることで、人型ロボット研究への参入障壁を大幅に下げている。
ロボットの製作費用は6380ドル(約90万円)で、同クラスの人型ロボットとして最も低価格を実現している。主要コンポーネントには10個のMyActuator RMD X6-40アクチュエーターを使用し、これにより12の関節を制御する。各アクチュエーターは18Nm(定格)、40Nm(ピーク)のトルクを発生し、無負荷時48V電源で11.5rad/sの速度で動作する。
構造材料にはアルミニウムと3Dプリント用PLA/ナイロン、異なる硬度のポリウレタン(TPU)を組み合わせ、選択的コンプライアンス設計により軽量かつ堅牢な構造を実現している。電源には26.1V、4.5Ahのリチウムポリマー電池を2個搭載し、1.5~2.5時間の連続動作が可能だ。
制御システムには基本コントローラーとしてRaspberry Pi 3B+を採用し、4×1.4GHzプロセッサーと1GB RAMを搭載する。オプションでNVIDIA Jetsonによる高性能コンピューティングにも対応する。アクチュエーターとの通信には1MbitのCANバスを使用し、位置・速度・トルクのフィードバック制御を行う。
AGILOpedの大きな特徴として、ガントリー(上部支持装置)なしで単独運用が可能な点が挙げられる。身長110cm、重量14.5kgというサイズは、人間スケールの環境での安全な動作と意味のある相互作用のバランスを考慮して選択された。
実験では歩行、ジャンプ、衝撃緩和、起き上がり動作などの動的タスクの実行能力が実証されている。これらの能力は、従来の研究用プラットフォームでは困難だった動的な運動を可能にしている。
設計では、二足歩行ロボットが必然的に転倒する可能性を考慮し、転倒時の戦略として腕を使った衝撃吸収や膝の屈曲による転倒高度の低減を実装している。さらに、生体模倣アプローチとして剛構造を軟組織様の材料で覆うことで、転倒による損傷を軽減するアプローチを採用している。
研究チームは、商用プラットフォーム(Unitree G1、Fourier-GR1、Booster T1など)が高価格であることや、研究用途での制限があること、カスタム部品使用により他の研究者による再現が困難であることを指摘。AGILOpedでは、CADモデルの完全公開と市販部品のみの使用により、これらの問題を解決している。