Categories: ニュース

AIで設計した新合金、ステンレス鋼を超える錆びにくさと高強度を3Dプリントで両立

南華大学(中国)とパデュー大学(米国)の共同研究チームが、AIを活用して3Dプリント向けの新しい鋼合金を設計することに成功した。錆びにくさ、強度、柔軟性を同時に備え、製造コストと処理時間も従来より大幅に削減できるという。

鋼材は一般に、強くするほど割れやすくなり、柔軟性を持たせると強度が下がるというトレードオフがある。高性能な合金ほど高価な元素を大量に必要とし、部品のプリント後には複数工程の熱処理が数日間にわたって必要なのが一般的だ。

研究チームはこの課題を解決するため、機械学習モデルを活用した。各元素の原子の大きさ、電子の挙動、金属中を伝わる音の速さなど、81種類の物理・化学的特性をAIに学習させ、強度と柔軟性を兼ね備えた合金の組み合わせを探索させた。

AIが導き出した組成は、鉄とクロムを主成分に、銅、シリコン、アルミニウムなど比較的安価な元素を少量加えたものだ。コバルトやモリブデンといった高価な希少金属は使わない。この合金をレーザー指向性エネルギー堆積(LDED)という3Dプリント技術で造形し、480℃で6時間の熱処理を1工程だけ施した。

試験の結果、引張強度は1713MPa、破断前の伸び率は15.5%を記録した。プリントしたままの状態と比べると強度は約30%、延性はおよそ2倍に向上している。塩水に浸した腐食試験でも、金属が削られる速度は年間0.105mmにとどまり、一般的なステンレス鋼(AISI 420)を上回る耐食性が確認された。

研究チームによると、腐食に強い理由は合金内部での銅粒子の働きにある。通常の高強度鋼では、クロムが金属内部で偏って消費されることで錆びやすい部分が生じる。この新合金では銅のナノ粒子がクロムを均一に分散させ続けるため、腐食の起点が形成されにくい。

一方で研究チームは、今回の機械学習モデルはLDED向けに最適化されたものであり、急冷速度が大きく異なる別の3Dプリント方式への直接適用には新たなデータ収集が必要だと指摘している。

論文は2026年3月31日付でInternational Journal of Extreme Manufacturing(DOI: 10.1088/2631-7990/ae5006)に掲載された。

関連情報

FabScene編集部

FabScene編集部