Anycubicが、産業グレードの精度を備えた光造形(MSLA)3Dプリンター「Photon P1」をKickstarterで発表した。Z軸繰り返し精度±0.01mm、対応レジン粘度8000cpsなど、従来のデスクトップ機を上回るスペックを備える。Super Early Bird価格は499ドル(約7万円)で、2026年1月から出荷する予定。
Photon P1は、Z軸の繰り返し精度±0.01mmを1万サイクルにわたって維持できる産業グレードのボールねじを採用した。一般的なデスクトップ向け光造形3Dプリンターが対応するレジン粘度は2000cps程度だが、Photon P1は最大8000cpsの高粘度レジンに対応する。これにより歯科用レジンやエンジニアリングレジン、弾性レジンなど、従来は産業用機器でしか扱えなかった素材を使用できる。
光学系にはAnycubic独自のLighTurbo 4.0を採用した。非球面フレネルレンズによりコリメーション(光の平行化)精度2度未満を達成し、112点の測定で92%以上の照射均一性を確保している。LCDパネルは14K解像度(X軸16.8μm、Y軸24.8μm)で、設置時の平坦度は70μm未満に抑えられている。
造形時のレイヤー剥離を滑らかにするWave Release Technologyにより、ピール力(造形物がレジンタンクのフィルムから剥がれる際にかかる力)を60%削減した。これにより細かいディテールの破損を防ぎ、造形の成功率を高めている。
別売のDual Material Print Kit(99ドル、約1万4000円)を使用することで、2色または2種類のレジンを1回のプリントで造形できる。スライサーソフトウェア「Photon Workshop 4.0」で各素材に異なる露光パラメーターを設定可能で、歯科モデルにおける硬質ベースと軟質歯肉の一体造形や、フィギュアの多色造形などに対応する。
レジンタンクには1000ml容量の温度制御機能を搭載し、18〜40℃の範囲で自動調整する。高粘度レジンは温度によって流動性が変化するため、安定した造形品質を維持するために温度管理が重要となる。
インテリジェント機能として、造形中のピール力をリアルタイムで監視して高さと速度を自動調整するDynamic Balance 3.0、レジンの流動を計算して各レイヤーの消灯時間を最適化するDynamic Light-Off Compensation 3.0、工場出荷時キャリブレーション済みのIntelligent Leveling System 3.0を搭載する。内蔵カメラによるAI監視機能では、造形の異常を検知して通知を送信できる。
ビルドプレートとレジンタンクは工具不要で脱着可能で、動作音は45dB以下に抑えられている。ネットワーク接続はWi-Fiとイーサネットの両方に対応し、専用アプリからのリモート操作やタイムラプス記録にも対応する。
Kickstarterでの価格は単体が499ドル(約7万円)、2台セットが998ドル(約14万円)。高粘度レジン向けのPerforated Steel Plate(穴あきスチールプレート)とElastic Resin 2本が付属するIndustrial Comboは634ドル(約8万9000円)となっている。本体保証は1年間、LCDスクリーンは6か月保証。出荷は2026年1月から順次開始される予定で、日本を含むアジア太平洋地域への配送にも対応している。