先日、QualcommがArduino買収と同時に「Arduino UNO Q」を発表、同製品を使った顔認識で操縦する電動カーが製作され、2025年10月にトリノの国立自動車博物館で開催された製品発表イベントでデモンストレーションされた。Qualcommプロセッサとマイコンのデュアル構成により、AIによる顔認識処理とリアルタイムのモーター制御を1つのボードで行う。制作したのはチャンネル登録者数130万人以上を持つ、YouTuberのJames Bruton氏だ。
電動カーでは、USBウェブカムで撮影した映像をArduino UNO Q上の顔検出モデルで処理し、運転者の顔の位置を検出する。検出幅が100ピクセル未満の顔は背景の人物として無視され、運転者の顔のみを追跡する仕組みだ。運転者が左右に体を傾けると顔がフレーム内で移動し、その位置データがArduino Router Bridgeを通じてマイコン側に送られ、ステアリングモーターを制御する。フレームレートは3フレーム/秒から4フレーム/秒で、モーションフィルタリングを適用して滑らかな動きを実現している。
車両のシャシーはGRP(ガラス繊維強化プラスチック)チューブと3Dプリント部品で構成され、モジュール式で分解可能な設計となっている。駆動系は後輪2輪をTurnigy製ブラシレスモーター(6374 9KV)で駆動し、VESC(スケートボード用ESC)で制御する。ステアリングは20:1減速比のギアヘッドモーター2基でラックを動かす方式で、ポテンショメーターで操舵角を測定してフィードバック制御を行う。電源は6S 24V LiPoバッテリーで、500Aコンタクターによる緊急停止機能を備える。
製品発表イベント「From Blink to Think」では、200人から300人の参加者を前にこの電動カーがデモンストレーションされた。スロットルはジョイスティックで手動操作し、ステアリングのみ顔認識で制御された。Arduino UNO Q上でWebサーバーとしてインターフェースをホストし、Wi-Fi経由でラップトップから顔認識の状態をモニタリングできた。
Arduino UNO Qは、Qualcomm QRB2210プロセッサとSTM32マイコンを搭載したデュアルブレイン構成のボードだ。プロセッサ側でDebian Linuxを動作させ、AIモデルの実行や画像処理、Webサーバーのホストが可能。マイコン側では従来のArduinoコードでリアルタイムのハードウェア制御を行える。消費電力は約1.2Wで、ヒートシンクなしで動作する。開発環境のApp Labは、ArduinoコードとPythonコード、HTMLを統合して記述できる。「Bricks」と呼ばれるPython APIのパッケージを使うことで、AIモデルやデータベースへのアクセスが簡単になり、Arduino Router Bridgeライブラリを通じて、Linux側で処理したデータをマイコン側のArduinoスケッチに渡せる。
今回公開された動画はQualcommがスポンサードしたタイアップ動画だが、Arduino UNO Qを使った具体的な制作例としてMakerの参考になるかもしれない。
James Bruton steers homemade car with his face(Arduino Blog)
https://blog.arduino.cc/2025/10/16/james-bruton-steers-homemade-car-with-his-face/
QualcommがArduino買収、AI搭載ボード「Arduino UNO Q」発表(FabScene)
https://fabscene.com/new/news/qualcomm-acquires-arduino-uno-q/