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アルテミス2号に搭載されたMITのレーザー通信システム、月からの映像を最大260Mbpsで地球へ送信

MITリンカーン研究所とNASAゴダード宇宙飛行センターが共同開発したレーザー通信システムが、2026年4月1日に打ち上げられたNASAのArtemis II宇宙船に搭載された。有人月ミッションでレーザー通信を実証するのは史上初となる。

Artemis IIは、NASA宇宙飛行士のReid Wiseman氏、Victor Glover氏、Christina Koch氏とカナダ宇宙機関のJeremy Hansen氏の4人を乗せた10日間のミッションで、50年以上ぶりに人間が月周辺まで飛行する。

搭載されたシステムは「Orion Artemis II光通信システム(O2O)」と呼ばれ、従来の電波(RF)通信に代わるレーザー通信でHD映像や月面画像を地球に送信する。電波通信はスペクトラムの逼迫や長距離での帯域制約という課題があるのに対し、O2Oは最大260Mbpsの下り通信速度を実現する設計だ。

O2Oの中核となる「MAScOT(Modular, Agile, Scalable Optical Terminal)」端末はMITリンカーン研究所が開発した。猫ほどの大きさで、2軸ジンバル上に取り付けられた口径4インチ(約100mm)の望遠鏡と、レンズや高速ステアリングミラーなどを含む光学アセンブリで構成される。ジンバルが望遠鏡の向きを精密に制御し、移動する宇宙船から地上局へとレーザービームを追跡し続ける。

O2OのリードシステムエンジニアでMITリンカーン研究所のFarzana Khatri氏は、従来の電波通信との違いについて次のように説明する。「Orion宇宙船はミッション初日だけで膨大なデータを収集するが、通常は大気圏再突入後に回収されるまで宇宙船内に留まり、オフロードには数ヶ月かかることもある。最高速の光リンクを使えば、数時間以内にすべてのデータを地球へ送り、即座に解析できる」。

MAScOTは2023年11月に国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げられた「ILLUMA-T」でも実績がある。ISSでの実証実験では設計値を上回り、下り1.2Gbps・上り155Mbpsを達成した。

一方、レーザー通信には課題もある。レーザービームは情報を高密度に運べる反面、宇宙船から地上の望遠鏡まで1000分の1度という精度で照準を合わせ続ける必要がある。また雲があると信号が遮断されるため、O2Oではニューメキシコ州、カリフォルニア州、オーストラリアの複数地上局を切り替えて対応する設計になっている。光通信が使えない場面では、電波通信がバックアップとして機能する。

同研究所のJade Wang氏は将来的な展望として、宇宙飛行士がビデオ通話で地上の医師と連絡を取ったり、月面探査をライブ配信したりするといった活用を想定しており、火星探査への応用も視野に入れているという。

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FabScene編集部

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