NASAは2026年3月5日、小惑星「2024 YR4」が2032年12月22日に月に衝突する可能性がなくなったと発表した。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による2026年2月の追加観測で軌道を精密に計算し直した結果、月面から約2万1200km離れた場所を通過すると分かった。
2024 YR4は直径約60m(15階建てビルほど)の小惑星で、2024年12月27日にチリのATLAS望遠鏡が発見した。当初は2032年に地球に衝突する可能性があるとされ、一時は「これまでに発見された中で最も危険な小惑星」と評された。その後の観測で地球への衝突は否定されたものの、月への衝突確率が約4.3%と算定され、天文学者の注目を集め続けていた。
仮に月に衝突した場合、TNT火薬換算で約600万トン(大型核爆発に相当)のエネルギーが放出され、直径約1.6kmのクレーターが形成されると試算されていた。月面で人類が初めて大規模衝突を目撃する機会になり得たが、月面基地計画や将来の有人活動にとっては脅威でもあった。
問題を解決したのはJWSTだった。2025年春以降、2024 YR4は地球からもほぼすべての宇宙望遠鏡からも観測できないほど暗くなっており、次の観測機会は2028年まで待つ必要があった。しかし米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(JHUAPL)のチームが、2026年2月18日と26日にJWSTで観測できる短い機会があることを見いだした。小惑星がESAのGaiaミッションで位置が精密に測定された恒星群の前を通過するタイミングで、JWSTの近赤外カメラ(NIRCam)がこれまでに観測した中で最も暗い天体の一つとして2024 YR4を捉えた。
NASAの近地球天体研究センター(CNEOS)とESAの近地球天体調整センター(NEOCC)がこのデータをもとに軌道を再計算し、月面衝突の確率をゼロと結論づけた。