米Augmentalは2026年7月22日、舌でカーソルを操作する入力デバイス「MouthPad」の一般販売を米国で開始した。歯列矯正のリテーナーのような形状で上の歯にかぶせて装着し、口の中から手を使わずにパソコンやスマートフォンを操作する。価格は1400ドル(約22万9000円)で、別途およそ100ドル(約1万6000円)の歯科スキャンが必要になる。
MouthPadは、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボからスピンオフしたAugmentalが開発した製品だ。2024年にアーリーアクセスプログラムとして限定的に提供を始め、今回が初めての一般販売となる。利用者ごとに歯科スキャンから型を起こして製作し、口蓋(上あご)に当たる面に圧力を感知するトラックパッドを配置する。舌でなぞればカーソルが動き、押せばクリック、吸う動作で右クリックになる。頭の動きを検知するモーションセンサーも内蔵しており、舌と頭のどちらでもカーソルを操作できる。BluetoothでOSを問わず接続でき、複数の機器と同時にペアリングして1つのボタンで切り替えられる。
同社は2026年前半に第2世代を投入し、マウス以外の用途にも広げた。舌のジェスチャーに任意のキーボードショートカットを割り当てたり、トラックパッドをゲーム用のWASDキーに置き換えたりできる。電池は7時間以上もつ。
性能面では、実際の利用者が示した数値が公開されている。日常的に業務で使うTomás Baptista氏は、速度と正確さを同時に測るカーソル操作の課題で毎秒10.47ビットを記録した。同社によれば、これは脳に電極を埋め込む方式の最先端ブレイン・コンピューター・インターフェースと同等の水準だという。現在100人を超える人が使っており、1日16時間装着する利用者もいる。順番待ちの登録者は6300人以上で、外科医や技師、ピアニスト、ボクサー、整備士など、手がふさがる職業の人も含まれる。
同社は同時に、「見えないキーボード」と位置づける新デバイス「Vox」のベータ版も公開した。聴診器に着想を得た首から下げるマイクで、空気を伝わる音だけでなく体を伝わる振動も拾う。周囲の雑音や他人の会話を従来のマイクより強く排除するため、図書館でのささやき声や騒がしいカフェでの小声でも文字入力ができる。ペンダントのボタンを押すか、MouthPadと組み合わせて舌のジェスチャーで起動する仕組みで、常時聞き取り続ける他のデバイスとは異なると説明する。
Voxを構想した背景には、同社CEOのTomás Vega氏自身の吃音がある。Apple在籍時に音声インターフェースを扱いながら自分では使えず、ただし小さな声なら症状が大きく軽減されることに気付いたという。ベータ版の初回出荷分の売上は、MouthPadを必要とする人への提供に充てる。価格は200ドル(約3万3000円)で、2026年後半の出荷を予定する。