オープンソースソフトウェアの法的権利を守る非営利団体「Software Freedom Conservancy(SFC)」は2026年5月18日、3Dプリンターメーカー大手Bambu LabがオープンソースライセンスのAGPLv3を少なくとも2件違反していることを正式に確認したと発表した。調査のきっかけはBambu Labが個人開発者のPaweł Jarczak氏に送付した法的警告だった。
Jarczak氏は、Bambu LabのクラウドサービスBambu Connectを経由せずに3Dプリンターへ印刷データを送れるOrcaSlicerのフォーク(OrcaSlicer-bambulab)を公開していた。Bambu LabはこのフォークについてBambu Studioへの不正アクセスや著作権侵害にあたるとしてGitHubからの削除を要求した。Jarczak氏は「抗議のもとで」削除に応じたと記録しており、SFCはこの圧力そのものがAGPLv3違反を構成すると判断した。
確認された1件目の違反は、Bambu Studioに組み込まれているネットワーク通信ライブラリ(libbambu_networking.so / bambu_networking.dll / libbambu_networking.dylib)を非公開のプロプライエタリとして扱っていることだ。Bambu Studioは競合のPrusaSlicer(さらにその元となるSlic3r)をベースに作られており、PrusaSlicer・Slic3rともAGPLv3でライセンスされている。AGPLv3のコピーレフト条項は「ソフトウェアと密接に結合されたコードもすべてAGPLv3で公開しなければならない」と定めており、ネットワーク通信という中核機能を担うlibbambu_networkingを非公開にすることはこれに反するとSFCは主張する。Bambu Lab自身もGitHub上で「bambu_networkingは独自ライブラリ」と公言しており、SFCはこれを「違反の自認」と評している。
2件目の違反は、JarczakへのC&D(使用停止要求)そのものだ。AGPLv3の第10条は「このライセンスのもとで認められた権利の行使に、追加の制限を課してはならない」と明記している。Jarczak氏のフォークはlibbambu_networkingを改変していたわけではなく、Bambu Studioの(不完全な)公開ソースを読んで通信プロトコルを解析したにすぎない。この行為はAGPLv3の範囲内であり、それに対してBambu Labが削除を強要したことがライセンス上の「追加制限」にあたるとSFCは結論付けた。
SFCはこれに対し「baltobu」プロジェクトを立ち上げた。3つのリポジトリを整備し、①libbambu_networkingのオープンソース代替実装のリバースエンジニアリング、②Jarczak氏の成果をベースにしたOrcaSlicerフォークの継続維持、③Bambu Studio自体の代替フォーク(viscose)の開発を進める。SFCは「Bambu Labの攻撃的な姿勢を恐れない。ボランティア参加者には一定の法的保護を提供する」としている。またライセンス遵守に必要な資金として17万5130ドル(約2750万円)を目標に寄付募集を開始しており、発表時点で7万4878ドル(約1175万円)が集まっている。
Bambu Labは自社ブログで「AGPLv3・DMCA・弊社利用規約のいずれも、クラウドサービスを保護する技術的保護措置を回避するリバースエンジニアリングを認めていない」と反論し、「当初から対話を求めており、対立激化は望んでいない」と述べた。