EVバッテリーのリサイクルには通常、高温処理や化学処理が必要で、大量のエネルギーを消費する。BMWは機械的な分解だけで原料を直接再利用できる「ダイレクトリサイクリング」技術を開発し、2024年12月にドイツ・バイエルン州ザルヒングで専用施設の稼働を開始した。
BMWとEncoryは2024年12月、バイエルン州ザルヒングに「セルリサイクリングコンピテンスセンター(CRCC)」を開設した。バッテリーセル生産で発生する余剰材料や使用済みセルを機械的に分解し、回収した原料をそのまま新しいバッテリーセルの生産に戻す。
従来のバッテリーリサイクルでは、原料を元素レベルまで分解するために化学処理や高温処理が必要だった。BMWが開発したダイレクトリサイクリングは、原料を完全に分解せず「直接」生産工程に戻す手法で、エネルギー消費を大幅に削減できる。
BMWはバイエルン州内に3つの拠点を設けている。ミュンヘンのバッテリーセルコンピテンスセンター(BCCC)で次世代バッテリーセルを研究開発し、パルスドルフのセル製造コンピテンスセンター(CMCC)でパイロット生産を実施。そしてザルヒングのCRCCでパイロット生産から出た余剰材料をリサイクルし、再びセル生産に投入する。3拠点間の距離が近いため、輸送コストと原料ロスを最小限に抑えられる。
CRCCの施設面積は生産・倉庫エリアが約2100平方メートル、オフィスと休憩室が約350平方メートル。屋根には太陽光パネルを設置し、放電したバッテリーセルから回収したエネルギーを施設の運営に活用する。フル稼働時には年間数十トン規模のバッテリー材料をリサイクルする見込みだ。従業員は約20名を予定している。
施設の建設・運営はEncoryが担当する。EncoryはBMWとInterzeroグループが50%ずつ出資する合弁会社で、車両部品の回収・リサイクル・再製造に関するソリューションを提供している。ダイレクトリサイクリング技術の知的財産権はBMWが100%保有する。