中国浙江大学の研究チームが、電気の力を利用してガラス表面のホコリや汚れを自動で除去する画期的なガラスを開発した。厚さわずか0.62mmの透明ガラスに細い電極を埋め込み、10秒で97.79%のホコリや汚れを水や洗剤を使わずに除去できる。この研究成果は2025年7月26日に科学雑誌「Advanced Science」で発表された。
研究チームは、電気を帯びた小さなホコリや汚れの粒子が、電気の力(電界)にさらされると予想外の動きをすることを発見した。粒子は単に横に移動するだけでなく、方向を逆転させたり表面から跳ね飛んだりする。この現象を応用して、手作業なしで自動清掃できる透明ガラスの開発に成功した。
従来のガラス清掃は水と洗剤を使った手作業が主流で、高層ビルの窓清掃などでは人命の危険も伴う。また、砂漠の太陽光パネルなど、乾燥して砂ぼこりの多い場所では従来の清掃方法では効果が限定的だった。この新技術は、そうした課題を電気の力で解決する。
このセルフクリーニングガラスは、既についた汚れを除去するだけでなく、新しい汚れの付着も防ぐ機能を持つ。電気を流すと、空気中に浮遊するホコリや汚れの粒子を跳ね返して、ガラス表面をより長時間きれいに保つ。研究チームはこの機能を「粒子シールド効果」と名付け、空気中からの汚れの付着を約90%削減できることを確認した。
ガラスの透明度はほとんど変わらず、光の透過率は肉眼では分からない程度しか低下しない。構造は、ガラス基板の上に透明な電極(ITO)と保護フィルム(PET)を重ねた3層構造となっている。電極とフィルムを追加しても、透明度の低下はそれぞれわずか1.3%、1.6%程度だという。
研究チームは実際の太陽光パネルでこの技術の効果を検証。汚れで発電量が半分に落ちた太陽光パネルに電圧5000ボルトの電気を4秒間流すことで清掃が完了し、発電量が94.3%まで回復した。清掃前は汚れのせいで50.1%も発電量が低下していたが、自動清掃によってほぼ元の性能を取り戻すことができた。
さまざまな種類の汚れでも高い清掃効果を確認している。シリカ、アルミナ、プラスチック系の粒子など、材質の異なる汚れに対しても94~97%の清掃率を達成した。また、汚れの量が多い場合でも清掃効果は変わらず、実用的な技術として期待できる。
この技術は太陽光パネル、自動車のフロントガラス、温室、高層ビルの窓など、透明で清掃コストの高い場所での活用が見込まれる。製造には特殊な材料や設備は必要なく、既存の工業技術で大量生産できるため、実用化に向けたハードルは比較的低いという。