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米Cornell大学が海底堆積物を使った水中3Dプリント技術を開発

米Cornell大学の研究チームが、海底でコンクリートを3Dプリントする技術を開発している。海洋インフラの現場施工や修理に活用できる技術として、米国防高等研究計画局(DARPA)の競争的研究資金で進められており、2026年3月に最終デモンストレーションを予定している。

プロジェクトは2024年秋、DARPAが「水深数メートルで3Dプリント可能なコンクリートを1年以内に設計せよ」という提案募集を出したことから始まった。Cornell大学土木環境工学のSriramya Nair助教授率いる研究チームは、すでに約2700kgの産業用ロボットで大規模コンクリート構造物を3Dプリントする研究を進めていたが、水中環境に対応するよう配合を調整することで実現可能性を見出した。

2025年5月、チームは1年間で140万ドル(約2億2000万円)の助成金を獲得。他の5チームと競い合いながら、段階的な目標達成を条件とした研究を進めている。

水中3Dプリントには複数の技術的課題がある。最大の問題はウォッシュアウトだ。セメント粒子が結合せず、材料が弱くなる現象で、通常は混和剤を添加して防ぐ。しかし混和剤を加えると粘度が高くなり、ポンプで輸送できなくなる。吐出後も形状を保ち、積層されたレイヤー同士が適切に接合する必要があり、複数のパラメーターのバランスが求められる。

DARPAはさらに高いハードルを設定した。コンクリートは主に海底堆積物で構成し、セメントはわずかしか含めてはならないという条件だ。海底の材料を活用できれば、大量のセメントを船で輸送する物流上の困難を回避できる。

2025年9月、Cornell大学チームはDARPA関係者に対し、高い堆積物含有率の目標に近づいていることを実証した。Nair氏は「海底堆積物を使って3Dプリントする研究は現在誰も行っていない。コンクリートの可能性を再構想する多くの機会が開かれている」と語る。

研究チームは材料設計チームと製造チームの2つに分かれ、学際的に取り組んでいる。Cornell大学からは電気コンピューター工学のNils Napp助教授、土木環境工学のGreg McLaskey准教授、材料科学工学のUli Wiesner教授、建築学部のJenny Sabin教授が参加。ミシガン大学、Clarkson大学、アリゾナ大学の研究者も協力している。

2026年3月の最終デモンストレーションでは、複数チームが水中でアーチを3Dプリントする競技形式で実施される。Cornell大学チームは数カ月間、Bovay Civil Infrastructure Laboratory Complexの大型水槽で週に複数回のテスト印刷を実施し、レイヤーの積層状況や強度、形状、質感を詳細に監視してきた。

実際の海洋環境では人間がスキューバダイビングで確認することはできないため、製造チームはリアルタイムで印刷を追跡するセンサーシステムの設計に取り組んでいる。Napp氏は「堆積物は非常に細かく、かき混ぜるとすぐに視界ゼロになる。濁度がどの程度になるか分からなかった」と説明する。チームはロボットアームに統合できる複数のセンシングシステムを備えた制御ボックスを設計し、水中コンクリート印刷の自律性と制御性を高めている。

Nair氏は研究の意義について「環境を破壊せずに建設したい。遠隔操作の水中ロボットが海への影響を最小限に抑えて現場に到着できれば、陸上で続けてきた従来の慣行ではなく、よりスマートな建設が可能になる」と述べている。

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FabScene編集部

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