英国のクランフィールド大学(Cranfield University)は、天然ゴムのラテックスを吹き付けて手袋を作る3Dプリンター「3D-PEP」を開発した。手の形をした型に液状のゴムを噴霧しながら内側と外側から加熱して固め、市販品とほぼ同じ性能の手袋を作れたという。研究したのは同大学のEva Peláez-Álvarez氏らで、手袋メーカーのMeditech Glovesと組んだ。論文は2026年4月20日に学術誌『Scientific Reports』に掲載され、大学が10月6日に成果を発表した。
ゴム手袋は現在、手の形の型を液状のゴムが入った槽に順番に浸し、乾かす工程を繰り返す「浸漬(しんし)」で大量生産されている。大学によると、この方式は大規模な生産ラインが前提で、製造前に全工程を決めておく必要があり、途中で仕様を変えるのは難しい。生産は主に東南アジアに集中しており、新型コロナウイルスの流行時のように供給が急に滞る恐れもある。
3D-PEPは、型を浸す代わりに、スプレーガンでラテックスを吹き付けて膜を作る。論文によると、試作では口径1.5mmのノズルを使い、型から60mm離れた位置から45度の角度で噴霧した。造形の指示データを変えるだけで条件を変えられるため、指先など特定の部分だけを厚くすることもできる。大学は、複数のプリンターで少しずつ仕様の違う手袋を同時に作ることも想定している。研究チームは4種類の手袋を試作し、厚さと引張強さ、伸びを市販品2種類と比べた。引張強さと伸びは市販品の範囲内に収まった。
生産量について論文は、1台で外科用手袋を1日に約1000枚作れると見積もった。浸漬の生産ラインより2桁ほど少ないが、同じ床面積なら約10倍を作れるという。大学は、装置が小さく、設置してすぐに製造を始められるため、欧州の都市部でも小規模な工場を置きやすいとしている。ただし、原料の天然ゴムは東南アジアが最大の産地で、欧州で調達できる代わりの原料としては、ロシアタンポポやグアユールが検討されているという。Peláez-Álvarez氏らは、手袋で手法の有効性を確かめたとして、他の産業への応用を検討する。