オランダの蓄電池スタートアップElestor(本社:アーネム)が、水素-鉄フロー電池の耐久性を商業的に妥当な連続稼働条件下で評価したホワイトペーパーを公表した。電気化学的な劣化も構造的な破損も確認されず、標準的な使用条件下で20〜25年の運用寿命が見込めるとしている。
フロー電池は固体電池と異なり、電力(出力)と蓄電量(容量)を分離して設計できる。Elestor社のシステムでは、電気化学セルスタックが出力を決め、鉄塩水溶液を蓄えるタンクの大きさが容量を決める。つまり長く蓄えたければタンクを大きくするだけで済み、電気回路側を作り直す必要がない。同社は8〜150時間の蓄電に対応できると説明しており、リチウムイオン電池が苦手とする数日にわたる電力需給の調整にも使える。
電極材料は水素(負極)と塩化鉄水溶液(正極)の2種類で、いずれも地球上で豊富に存在する。リチウム・コバルト・バナジウムといったレアメタルを使わないため、資源調達リスクや地政学的な依存度を下げられる点が強調されている。試験では大型セルスタックを実際の産業運用に近い電流密度・温度・電圧域で継続的にサイクル運転した。数万サイクルにわたって性能は安定し、標準的な調整手順で完全に回復可能な状態を維持したとしている。
経済性の試算では、活物質コストは1kWhあたり約2.8ユーロ(約460円)で、システム全体の建設コスト(CAPEX)は1kWhあたり15ユーロ(約2500円)に到達できるとしている。運用期間全体での均等化貯蔵コストは1kWhあたり0.02ユーロ(約3.3円)と試算した。
商業化のスケジュールについては、2025年に最大500kW・3MWhの産業規模パイロット設備を稼働させ、2027〜2028年に標準化したモジュールを市場投入する計画だとしている。オランダ国立成長基金からは「SLDBattプロジェクト」の一環として2200万ユーロ(約37億円)の支援を受けている。
再生可能エネルギー由来の電力を太陽光・風力の発電が少ない期間にまたいで貯蔵するインフラは、自家発電を含む分散型エネルギーシステムの設計でも課題になっている。電力と容量を独立してスケールできる設計思想は、大規模施設だけでなく工場・農場・オフグリッド拠点での応用にも接点を持つ。同社は欧州エネルギー貯蔵協会(EASE)などの機関とも連携しており、EU電池規則(2023/1542)への適合も確認しているとしている。
1984年に登場したAmstr…