航空機や風力発電のブレードに使われる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量で強度が高い一方、リサイクルがほぼ不可能という課題を抱える。スイス連邦材料試験研究所(Empa)の研究チームは、リサイクル可能かつ難燃性を備えたエポキシ樹脂を開発した。研究成果は学術誌Chemical Engineering Journalに掲載された。
エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂に分類され、硬化後は分子鎖が架橋して再溶融できなくなる。Empa Advanced Fibers研究室のArvindh Sekar氏によると、従来のエポキシ樹脂の処分方法は焼却か埋め立てしかなかったという。
研究チームが開発した新しいエポキシ樹脂は、リン含有ポリマーを硬化前に添加する。このポリマーがエポキシと化学反応し、難燃性を維持しながら、加熱時にポリマー鎖間の架橋が再配列する性質を持つ。使用後の材料を粉砕して加熱プレスすれば、新しい形状に成形できる。この熱機械的リサイクルを10回繰り返しても、機械的強度に大きな低下は見られなかったという。
繊維強化複合材料の場合は、化学的に溶解して繊維を回収する方法も採用できる。Sekar氏によると、繊維に加えてエポキシとリンの90%以上を回収可能だという。ただし化学的リサイクルは多くのエネルギーと溶剤を必要とするため、熱機械的リサイクルを優先すべきだと同氏は指摘する。
想定される用途として、研究チームは屋内外のコーティング材を挙げる。リンの添加により、従来のエポキシ樹脂より色安定性が高く黄変しにくいという。風力発電タービンの接着剤としての応用も見込む。風力タービンは短絡や落雷による火災リスクがあり、難燃性素材の需要が高い。硬化後も条件次第で再成形できるため、メンテナンスや部品交換も容易になるとしている。
研究チームは数年にわたりこのエポキシ樹脂の開発を進めてきた。製造プロセスを改良し、工業生産へのスケールアップが可能な段階に達したという。現在、商業化に向けた産業パートナーを募集している。