Espressif Systemsは、同社初のWi-Fi 6E対応SoC「ESP32-E22」を発表した。トライバンド(2.4/5/6GHz)に対応し、Radio Co-Processor(RCP)として動作する新しいアーキテクチャを採用している。エンジニアリングサンプルの提供を開始した。
ESP32-E22は、Espressifが「高性能ワイヤレス接続」を目指す新製品ラインの基盤と位置付けられる。最大の特徴は、Wi-FiとBluetoothのプロトコルスタック全体を内部で処理するRCPアーキテクチャだ。セキュリティ、認証、スキャン、ローミング、Bluetoothホスト機能をESP32-E22側が担当し、ホストプロセッサはアプリケーションロジックに専念できる。
Wi-Fi 6Eは、既存の2.4GHz帯と5GHz帯に加え、6GHz帯を利用できる規格だ。ESP32-E22は160MHz帯域幅、2×2 MIMO、ビームフォーミングに対応し、1024-QAM変調により最大2.4Gbpsのデータレートを実現する。CES 2026での実機デモでは、iperfテストで最大2.1Gbpsの物理スループットを記録した。
Bluetooth側は、Classic(BR/EDR)とBluetooth Low Energy 5.4の両方をサポートする。共存アルゴリズムにより、Wi-FiとBluetoothを同時に動作させても安定した通信を維持する。
コア部分には、Espressifが自社開発したデュアルコア500MHz RISC-Vプロセッサを搭載する。メモリは1MBで、PSRAMのオプションはない。GPIOは41本用意されている。
ホストプロセッサとの接続には、PCIe 2.1、SDIO 3.0、USBなど高速インターフェースを選択できる。Espressif自社のSoCだけでなく、サードパーティ製プロセッサとの組み合わせも想定されている。
想定される用途は幅広い。高帯域ストリーミングやワイヤレスビデオリンク、次世代スマートホームハブ、コネクテッド家電、産業オートメーション、ブリッジングソリューション、低レイテンシが求められるAR/VRアクセサリなどが挙げられている。
RCPアーキテクチャの採用により、システム設計の自由度が高まる。既存の製品にWi-Fi 6E機能を追加したい場合、メインプロセッサを変更せずにESP32-E22を追加するだけで対応できる可能性がある。プロトコルスタック処理をオフロードできるため、メインプロセッサのリソースをアプリケーション開発に集中させられる。
CES 2026では、ESP32-E22の実機が展示された。ボードには2本の外部アンテナ、2つのUSB-Cポート、各種I/Oが搭載されていた。エンジニアリングサンプルのチップには「JUPITER-V1P」という内部コードネームが記されていた。
同時に、超低消費電力MCU「ESP32-H21」も披露された。こちらはシングルコア96MHz RISC-V、320KB RAM、Bluetooth LE + IEEE 802.15.4(Zigbee/Thread)を搭載し、IoTノード、ウェアラブル、センサーアプリケーション向けに設計されている。ESP32-E22が高性能方向、ESP32-H21が低消費電力方向と、ESP32ファミリーの製品ラインが両極に拡大している。
Espressifの投資家向け資料によると、Wi-Fi 7対応製品や32ビットマルチコア(クアッドコア以上)SoCも開発中とされる。これらは2027年以降に登場する見込みだ。
ESP32-E22の価格や量産開始時期は未発表。開発キットやモジュール、SDK対応の詳細も明らかにされていない。関心のある開発者は、Espressifのカスタマーサポートチームに問い合わせることでエンジニアリングサンプルにアクセスできる。
ESP32シリーズは、Maker界隈や組み込み開発において広く採用されている。Wi-Fi 6Eへの対応により、高速データ転送が必要なアプリケーションの開発が可能になる。特に6GHz帯は混雑が少なく、安定した高速通信を期待できる。RCPアーキテクチャの採用で、既存のESP32シリーズとは異なる使い方が広がるだろう。
Espressif Introduces ESP32-E22, Its First Wi-Fi 6E Connectivity Co-Processor(Espressif Systems)