Categories: ニュース

異なる金属を1回のプリントで造形——次世代ロケット部品向けマルチマテリアル3Dプリント技術を開発

独フラウンホーファー鋳造・複合材料・加工技術研究所(Fraunhofer IGCV)は、ロケット推進部品向けのマルチマテリアル積層造形(3Dプリント)技術を開発していると2026年3月26日に発表した。EUの研究プロジェクト「Enlighten」および「Enlighten-ED」(総額約3800万ユーロ、約63億円)の一環で、2027年初頭までArianeGroupを含む十数の研究機関・企業が参加する。

開発の核となるのはレーザービーム溶融(Laser Beam Melting)によるマルチマテリアル造形だ。2種類以上の金属粉末を同時に供給しながらレーザーで溶融・積層することで、部位ごとに異なる材料特性を持つ部品を1工程で仕上げられる。従来は磁性・非磁性の鋼合金など素材の異なるパーツを個別に機械加工・溶接していたが、この技術では同一プロセスで一体化できる。

チームはすでにロケットのバルブ部品のデモンストレーター(試作品)を製造した。飛行中の姿勢安定に寄与するこのバルブは、磁性と非磁性の鋼合金を交互に積層した構造で、高密度かつ精密な材料分布をラボで確認済みだ。現在は従来の切削・溶接品と直接比較し、性能・効率・コスト・サイクルタイムの優位性を定量化している。「コンピューター上で部品をカスタマイズしてすぐ印刷できる。この柔軟性が開発の数週間を節約する」とFraunhofer IGCV研究者のConstantin Jugert氏は述べている。

一方、材料の接合部は破損の起点になりやすい。チームはKU Leuven(ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学)と共同で、チタンとニッケル合金の接合問題にも取り組んだ。両素材を直接接触させると脆性相が生じることが分かったため、薄いモリブデン中間層を挟む手法を考案。シミュレーションと実験を組み合わせてラボスケールでの接合に成功しており、軽量・機能統合型部品への道を開く成果としている。

また使用済み粉末の再利用も課題に取り組んでいる。印刷中に混合した2種の粉末を磁気分離システムで自動的に分別・回収する仕組みを開発しており、材料コストと排出量の削減を図る。将来的にはサーモグラフィやセンサーによるリアルタイム監視とクローズドループ制御で品質を確保し、量産へのスケールアップを目指す方針だ。

3Dプリントによるロケット部品製造はSpaceXやRocket Labなど民間企業がすでに実用化しているが、EUの公的機関側はこれに後れを取っていた。Enlightenプロジェクトはその格差を埋め、欧州の宇宙アクセスの自立性を高めることを目的の一つに掲げている。

関連情報

FabScene編集部

FabScene編集部