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建設期間わずか2〜3年の「小型原発」、英国の安全審査を史上最速で通過——2029年にカナダで商用運転へ

GE Vernova Hitachi Nuclear Energyが開発した小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」が、英国の原子炉設計審査を過去最速で通過した。従来の大型原発が建設に10年以上かかるのに対し、今回の小型原発は2〜3年で建設でき、2029年末にはカナダで世界初の商用運転が始まる見通しだ。

GDAは英国原子力規制局(ONR)、環境庁(EA)、ウェールズ自然資源局(NRW)が新型原子炉の安全性、セキュリティ、環境保護の観点から設計を評価するプロセスだ。ステップ2の評価では、BWRX-300の設計に安全性やセキュリティ、環境保護に関する根本的な欠陥は確認されなかったとしている。

BWRX-300は出力300MWの沸騰水型軽水炉で、自然循環と受動的安全システムを採用している。GE日立ニュークリア・エナジーが開発したESBWR(経済的で簡素化された沸騰水型原子炉)の設計と許認可を基盤としており、モジュール工法により建設期間は24〜36か月を想定する。従来の原子炉建設と比較して、敷地面積を約90%、コンクリート使用量を約50%削減できるという。設計寿命は約60年、燃料交換サイクルは12〜24か月だ。

世界各地で進む導入計画

初号機の建設はカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)が進めており、トロント近郊のダーリントン・サイトで2025年に着工、2029年末の商業運転開始を予定している。同サイトには計4基の建設が計画されている。

アメリカでは、テネシー川流域開発公社(TVA)がテネシー州オークリッジのクリンチリバー・サイトへの建設申請を米国原子力規制委員会(NRC)に提出し、審査が進んでいる。ポーランドではOrlen Synthos Green Energy(OSGE)が東欧への展開を視野に入れ、英国GDAへの共同出資を通じて規制対応のノウハウを蓄積している。

GVH英国カントリーリーダーのAndy Champ氏は、ステップ1と2をこれほど短期間で完了したのは同社が初めてであり、カナダでの建設の進捗が審査の迅速化に寄与したと述べている。

なお、現時点で英国内でのBWRX-300の建設計画や候補地は発表されていない。実際の建設には、ステップ3の詳細設計審査またはサイト固有の審査を経る必要がある。

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プレスリリース(GE Vernova)

FabScene編集部

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