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埃や虫と戦いながら古書1765冊を電子化、10年の手作業が教師データに

パキスタンの私設アーカイブ「Ibteda Digital Library」が、10年分のPhotoshop作業をAIの教師データに変えた。ウルドゥー語の古書を電子化してきた団体で、運営は3人が担う。

きっかけは2015年ごろ、ガーリブの詩集の新版を作ろうとしたことだった。歴史的な版が手に入らない。絶版になり、大学の書庫では閲覧が難しく、個人の書棚に眠っている。ならば自分たちで集めるしかない、と考えた。

作業台は自作した。平らな机の上にニコンのデジタル一眼レフを固定し、照明には安価なLED電球を使う。本を押さえるガラスはコピー機から回収した。スキャナーも助成金も専用の設備もない。1回のシャッターで見開き2ページを撮る。ただし写るのは紙面だけではない。黒い天板や綴じ目の影、紙の縁やしみ、書き込みまで入る。そこで誰かがPhotoshopで1枚ずつ開き、2ページ分の画像に切り分けた。どこで切るか。どれだけ回すか。余白をどこまで残し、傷んだ角をどう扱うか。1ページなら些細な判断も、数千冊が相手では作業量の限界になる。

10年で撮った見開きは82万2161枚。撮影に約3000時間、仕上げに約1万200時間を要した。うちPhotoshopで仕上げたのは57万5729ページ面、1765冊分だ。主力機のニコンD5300は、最後の写真でシャッター57万5747回を記録した。公称の耐久回数10万回の、5.8倍である。やがて撮影が仕上げを追い越し、2026年4月に運用を止めた時点で52万6392枚が未処理で残った。

自動化も試した。輪郭を検出する、紙の色でしきい値を切る。一部の本では動く。蔵書全体では通用しない。石版印刷の枠飾り、しみた紙、綴じ目の影。どれもが偽の輪郭になる。

そこで着目したのが、手元にある57万5729枚だった。1枚ごとに、どこで切りどれだけ回したかという判断が残っている。それがそのままラベルになる。SIFTという特徴点の照合で元の見開きを突き止め、仕上げページの4隅を投影すれば切り取り位置が戻る。誤ったラベルを1件入れるより正しい1ページを失うほうがまし、と採用の条件は厳しく置いた。こうして3万5648件のラベルができた。ただし新しい本ごとに10枚の較正が要り、約3分の1のページは人の確認に回る。

運用を止めた理由は、資金と個人の事情、そして精神的な消耗だった。撮影担当は10年間、紙の埃とアレルギーと本の虫に耐えながらページをめくり続けた。それでも1300冊超をInternet Archiveで公開し、生の写真も検証できる形で残した。コードとモデルの公開は検討中だという。

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FabScene編集部

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