オーストラリアの造船会社Incat Tasmaniaは2025年12月14日、世界最大のバッテリー電気船「Hull 096」の初の電動モーター試験をタスマニア州ホバートで完了した。全長130mの同船は、100%バッテリー電力のみで航行試験を実施した船舶として世界最大となる。
Hull 096は南米のフェリー運航会社Buquebus向けに建造された。乗客2100人と車両225台以上を収容でき、アルゼンチンとウルグアイを結ぶラプラタ川横断航路で運航する予定だ。
同船には250トン以上のバッテリーが搭載されており、蓄電容量は40MWh以上に達する。これは世界の船舶に設置されたバッテリーシステムとしては過去最大で、従来の記録の4倍の規模となる。エネルギー貯蔵システムはWärtsiläとCorvus Energyが供給し、8基のWärtsilä製軸流ウォータージェット(WXJ1100)を駆動する。
バッテリーでの航行可能時間は約90分で、アルゼンチンとウルグアイの両岸に設置される充電設備により約40分でフル充電できる。
Incatはアルミニウム製双胴船(カタマラン)の設計で知られており、同等の鋼鉄製船舶と比較して最大40%の消費電力削減と低排出を実現している。同社の造船所は100%再生可能エネルギーで稼働している。
Hull 096は2025年5月に進水しており、今後内装工事を完了させた後、数カ月以内に南米へ向けて出航する予定だ。船内には2300平方メートルの免税店デッキも設けられ、フェリーとしては世界最大のショッピングスペースとなる。
Incatは同船のほか、デンマークのフェリー運航会社Molslinjen向けにも100%バッテリー電気フェリー3隻の建造契約を締結している。各船は全長129mで45MWhのバッテリーシステムを搭載し、乗客1483人と車両500台を収容しながら40ノット以上で航行する設計だ。