ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」で知られるiRobotが2025年12月14日、米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。同社の主要貸付先であり製造パートナーでもある中国・深圳のPicea Roboticsが買収する。2026年2月までに手続きを完了する見込みだ。
iRobotは裁判所の監督下で事業再編を進める。Piceaが同社の株式100%を取得し、iRobotは上場廃止となって非公開企業となる。既存株主への配当はなく、株式は無価値となる見通しだ。
Gary Cohen CEOは「本日の発表は、iRobotの長期的な未来を確保するための重要な節目だ」と述べた。財務基盤の強化により、消費者、顧客、パートナーへの継続性を提供し、30年以上にわたりiRobotブランドを定義してきたRoombaロボットとスマートホーム技術の進化を続けるとしている。
チャプター11手続き中も、iRobotは通常どおり事業を継続する。アプリ機能、カスタマープログラム、製品サポートに影響はないという。従業員への支払いや取引先への債務も履行する。
買収するPiceaは、ロボット掃除機の製造・サービスを手がける企業で、中国とベトナムに研究開発・製造拠点を持つ。従業員は世界で7000人以上、これまでに2000万台以上のロボット掃除機を製造・販売してきた。知的財産権は1300件以上を保有する。
iRobotは1990年にMIT人工知能研究所のメンバーによって設立され、2002年に初代Roombaを発売した。ロボット掃除機市場を切り開いたパイオニアとして、累計数千万台を販売してきた。
しかし近年は中国メーカーとの競争激化で苦戦が続いていた。2022年8月、Amazonが約17億ドル(約2600億円)でiRobotを買収すると発表したが、EUや米国の規制当局が競争上の懸念を示し、2024年1月に買収は断念された。EUは、AmazonがiRobotを傘下に収めれば、競合他社の製品をAmazonのマーケットプレイスで不利に扱う可能性があると指摘していた。
買収断念と同日、創業者のColin Angle CEOが辞任し、従業員の約31%にあたる350人を解雇する大規模リストラを発表。Amazonからは9400万ドル(約150億円)の解約金を受け取ったものの、業績は回復せず、株価は過去5年で90%以上下落していた。
iRobot Announces Strategic Transaction to Drive Long-Term Growth Plan(iRobot)