英国・米国・オーストラリアの国際研究チームが、電波望遠鏡や衛星通信用アンテナといった既存のインフラを衛星・スペースデブリの監視用レーダーとして転用する新方式「Long Baseline Multistatic Radar(LBMR)」の実証に成功したと発表した。英マンチェスター大学が運用する口径76mのラベル望遠鏡と、同大学のe-MERLINアンテナ群を活用し、この種のレーダー手法としては世界初のライブ実証だとしている。
監視対象である静止軌道(高度約3万6000km)は地球から遠く、物体を検知するには大出力の送信機と高感度の受信機が必要になる。研究チームは、恒星や銀河からのかすかな自然電波を捉えるために作られた電波望遠鏡や、遠く離れた探査機からの微弱な信号を日常的に受信している大型の深宇宙通信用アンテナに着目した。これらを地理的に離れた場所に配置されたレーダー受信機として組み合わせることで、既存レーダーシステムの感度を10倍以上に高め、より小さな物体をより遠方で検知できるようにした。
実証は、英ハーウェルにある欧州宇宙機関(ESA)の施設で開催されたイベントで実施し、英国とオーストラリアの政府・国防・産業界の関係者が、レーダーによる検知・測定結果をその場の画面でリアルタイムに確認した。プロジェクトは英国宇宙庁(UKSA)の国際二国間基金(IBF)の助成を受け、英バーミンガム大学が主導した。2020年に発足したNATOの研究タスクグループ2件を起点とし、当初からマンチェスター大学が参加してきた。英国からはラベル望遠鏡とe-MERLINアンテナ、米国からは米MITリンカーン研究所のレーダー、オーストラリアからは連邦科学産業研究機構(CSIRO)の電波望遠鏡「Mopra」がそれぞれ組み合わされ、南半球からの独立した受信能力も確保したという。
研究チームは、専用施設を新設する場合と比べて大幅に投資と時間を抑えながら、それを上回る性能を実証できたとしており、今後は宇宙状況把握(SDA)の運用能力として実用化を目指すとしている。