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熱で変形し1秒以内に元に戻る——KAISTがモーター不要のロボット用アクチュエーターを開発、変形量は従来比8.6倍

韓国科学技術院(KAIST)機械工学科のSeong Su Kim教授らの研究チームが、モーターを使わずに繰り返し動作できる軽量スマートアクチュエーターを開発した。研究成果は2026年1月19日付で学術誌「Advanced Functional Materials」にオンライン掲載された。

ロボットアームや宇宙展開構造物には、軽量で繰り返し動作できるアクチュエーターが求められる。従来のモーター駆動方式は重量と機構の複雑さが課題で、形状記憶材料を使ったアクチュエーターも「一方向にしか動かない」「回復が遅い」という問題があった。

今回の研究では、形状記憶合金(SMA)と形状記憶ポリマー複合材料(SMPC)を組み合わせたハイブリッドアクチュエーターを設計した。SMPCは化学組成を改良し、カーボンファイバーで補強することで剛性を高めた。さらに、テープスプリング(巻き尺の金属テープ状の構造)から着想を得た曲面構造を組み込み、変形時に蓄えたエネルギーを一気に放出する「スナップスルー効果」を利用することで、高速な動作と高精度な形状回復を両立させた。

研究チームが発表した性能データによると、加熱時に曲げ変形し、冷却時に元の形状に戻る双方向動作を1秒以内で完了する。従来の形状記憶材料と比べ、可逆変形量は8.6倍、逆方向への回復速度は4.9倍に向上した。形状の回復率はほぼ100%で、複数回の繰り返し動作でも一定の性能を維持するという。

Kim氏は「独創的な構造設計によって材料の物理的限界を克服し、形状記憶アクチュエーターの性能を次の段階へと引き上げた研究だ。繰り返し動作が必要なロボットグリッパーや、宇宙用の展開構造物など、さまざまな分野への応用が期待できる」と述べている。論文の筆頭著者はKAISTの博士課程学生、Dajeong Kang氏。

ロボティクスの文脈では、このような熱応答型アクチュエーターは把持・解放を繰り返すグリッパーの駆動源として有望視されている。モーターを排除することで部品点数と重量を大幅に削減できる可能性があり、小型ロボットや宇宙機への搭載で特に効果が見込まれる。自作ロボットの分野でも、将来的に形状記憶合金ワイヤーを使った軽量アクチュエーター設計の参考になる研究だ。

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FabScene編集部

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