韓国化学研究院(KRICT)のDong-Gyun Kim氏、漢陽大学のJeong Jae Wie氏、世宗大学のYong Seok Kim氏らの共同研究チームが、石油精製の副産物として生じる廃棄硫黄を原料に、熱・光・磁場の3つの刺激に反応して自律的に動くソフトロボットを4Dプリントで製作する技術を開発した。使用後の構造体を溶かして完全にプリント材として再利用できる「閉ループ製造」を実証したのも初めて。成果はAdvanced Materials誌(2025年11月号)に掲載された。
石油精製ではフィラメントや容器などに転用しにくい元素硫黄が大量に副生する。米地質調査所(USGS)によれば2024年の世界生産量は約8500万トンに達し、多くは肥料向け硫酸に転換されているが供給過剰が続いている。硫黄を高分子の主鎖に取り込んだ「硫黄リッチポリマー」は赤外線透過や重金属捕集など独特の機能を持ちながら、従来は硬化した架橋構造のため流動性が低く3Dプリントが困難だった。
研究チームはポリ(フェニレンポリスルフィド)ネットワーク(PSN)と呼ぶ架橋密度を意図的に下げた高分子を設計した。動的なS—S結合が剪断力で流れやすくなる特性(シアシンニング)を持つため、ホットメルト押出方式(FFF方式に相当)でPSNを複雑な形状に造形できる。さらにFe₃O₄磁性粒子を分散させたMPSNコンポジットも開発し、1cm未満の小型ソフトロボットにまで加工した。
4Dプリントとは、「印刷後に時間とともに形状が変化する素材」を使う3Dプリント技術を指す。PSN製の構造体は熱や光(近赤外線)に反応してあらかじめプログラムされた形状に自律変形し、MPSNは外部磁場との組み合わせでも動作する。近赤外線レーザーをわずか8秒照射することでパーツ同士をS—S結合の交換反応で化学的に溶着でき、接着剤なしでモジュールを組み合わせた複雑構造の構築も可能だ。サグラダファミリアを模した建築モデルのデモや、試薬中で磁気撹拌棒として機能しながら設定温度で触媒を自動放出するカプセルの実証も行われた。
最大の特長は閉ループ性だ。印刷した4D構造体を使い終わった後に加熱して溶融すると、品質・体積の損失なく新たなプリント材として再投入できる。Kim氏は「工業廃棄物をロボット材料にアップサイクルした初の事例であり、自律動作と回収可能性を兼ね備えたスマート材料はソフトロボティクスと自動化の鍵になる」とコメントした。
FFF方式のプリンターと相性のよい押出型素材であることから、将来的には家庭用3Dプリンターでも造形できる軟質アクチュエーターや、使い捨てにしないロボットパーツの製作に応用できる可能性がある。