個人開発者のYaraslau氏がESP32-S3を使った予測照明システム「LightTrack Vision」を開発し、Kickstarterで資金調達を開始した。ミリ波レーダーセンサーで人の動きを予測し、移動する光の軌跡を作り出す。
LightTrack Visionは、ESP32-S3マイコンとミリ波レーダーセンサー(LD2450)を組み合わせた照明システムだ。人の位置と速度を検出し、移動先を予測して光を先回りさせる仕組みを持つ。Yaraslau氏がRedditのr/esp32コミュニティに投稿し、開発の経緯と技術的な詳細を公開した。
システムの核となるのはESP32-S3のデュアルコアアーキテクチャだ。1つのコアでレーダーデータの処理と予測アルゴリズムを実行し、もう1つのコアでWebサーバーとLEDストリップの更新を処理する。レーダーセンサーから送られる大量のデータをミリ秒単位でリアルタイム処理する必要があるため、旧モデルで使用していたESP8266では処理能力が不足していたという。
開発で最も困難だったのは、ノイズの多いレーダーデータのフィルタリングと追跡アルゴリズムの構築だ。Yaraslau氏は数週間かけてカルマンフィルターを実装し、主要なターゲットを特定して位置と速度を維持し、速度ベクトルから将来の位置を外挿して光の軌跡を制御する仕組みを完成させた。
プロジェクトはオープンソースとして公開されており、GitHubでPlatformIOプロジェクトの全体、回路図、3Dファイルが入手できる。ファームウェアはLD2450レーダーモジュールに対応している。
Kickstarterでは屋内用の「LightTrack Vision」と防水仕様の「LightTrack Vision Outdoor」の2モデルを提供する。制御モジュールにESP32-S3プロセッサーとニューラル処理ユニット(NPU)を搭載し、レーダーの検知範囲は5mから8m(実使用時は最大10m)に拡大した。LEDの密度は従来の2倍で、点のない連続した光を実現している。
設定はWi-Fi経由でWebインターフェースからアクセスでき、アプリのインストールは不要だ。明るさと色、光の軌跡の長さとフェード速度、遅延時間、スケジュールや夜間モードなどを調整できる。新機能のゾーンエディターでは、レーダーインターフェース上で直接、照明を作動させる領域と除外する領域を定義できる。
屋内用モデルには制御モジュール、5mのLEDストリップ、1.5mのUSB-Cケーブル、1mの延長ケーブルが含まれる。屋外用モデルはIP67相当の防水・防塵性能を持ち、5mのUSB-Cケーブルが付属する。LEDストリップは5m単位で最大10mまで延長可能だ。
Kickstarterの早期支援価格は屋内用が89ドル(約1万2400円)、屋外用が114ドル(約1万6000円)。キャンペーン終了後の2025年12月から生産を開始し、2026年1月の出荷を予定している。製造はポーランドの工房で開発者自身が組み立てと検査を行う。