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英マンチェスター大、ウェアラブル脳波計でリアルタイムにノイズ除去するAIを開発

てんかん患者の脳波モニタリングを病院から自宅へ——英マンチェスター大学の研究チームが、ウェアラブルデバイス上でリアルタイムに脳波信号からノイズを除去するAIシステムを開発した。センシティブな脳データを外部サーバーに送信せず、デバイス単体で処理できる点が特徴だ。

脳波(EEG)を測定するウェアラブルデバイスは、てんかんなどの神経疾患を手術なしでモニタリングできる可能性を持つ。しかし、体の動きや筋肉の収縮、外部の電気的干渉などによる「アーティファクト」と呼ばれるノイズが混入し、測定精度を下げてしまう問題があった。

Mahdi Saleh博士らの研究チームは、脳波信号をリアルタイムで「クリーニング」するディープラーニングモデルを開発した。小型で低消費電力のウェアラブルデバイス上で動作し、ノイズや干渉を除去してより正確な読み取りを可能にする。

この手法の利点は、脳データをリモートサーバーに送信する必要がない点だ。プライバシーを保護しながら、デバイス単体でAI処理を完結できる。研究チームによれば、高度なAIによるEEGモニタリングが小型ウェアラブルデバイスで動作することを実証したのは、これが初めてだという。

Saleh博士は「これにより、病院レベルのモニタリングが日常的に利用できるようになる。てんかん患者の支援だけでなく、よりスマートなヘルスケアの未来を切り開く」と述べている。

てんかんケア以外にも、次世代の健康デバイスやブレイン・コンピューター・インターフェースへの応用が期待される。プライバシー、携帯性、リアルタイム性能が求められる分野での活用が見込まれる。

この研究はEIC Pathfinder RELIEVEプロジェクトの支援を受けている。


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FabScene編集部

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