アラブ首長国連邦のモハメド・ビン・ザイード人工知能大学(MBZUAI)の研究チームは、化学の実験室で使われる市販の機器198台を、ロボットのシミュレーションでそのまま動かせる形にしたデータ集「ChemLab-Assets」を、10月14日にGitHubで公開した。チームはデータ本体をHugging Faceに置いた。
チームは、実験室で働くAIには機器の形だけでは足りないと説明する。例として、排気のための囲い(ドラフトチャンバー)の前扉は673mm動いて457mmの位置で止まること、天秤の風よけの扉を動かすと重さが落ち着いたかの判定がやり直しになることを挙げ、こうした機器の振る舞いを形と一緒に収めたとしている。
対象は115社の198機種で、熱・機械、計量と試料の取り扱い、顕微鏡、質量分析、電気化学など16の分野にまたがる。チームは、大学の化学の授業と研究で使われる200の機器を調べて選び、各社のカタログやマニュアル、論文をもとに作った。Agilentのガスクロマトグラフ、METTLER TOLEDOの天秤、Opentronsの液体分注ロボットなどが含まれる。データには、部品ごとの形状、扉やふた、つまみなど1328カ所の可動部、表示部648カ所、機器に出せる操作の定義4639件が入る。チームは機器ごとに、時間とともに状態が変わる様子を再現するPythonのプログラムも付けた。チームは198台すべてを、NVIDIAのロボット用シミュレーター「Isaac Lab」で動く形式に変換している。
READMEの例では、ロボットがドラフトチャンバーの前扉を上げ、風速計で吹き込む空気の速さを測り、気流モニターを校正する。本当の風速はロボットからは見えず、評価する側だけが知っている。
チームはデータの限界も明記した。形状はメーカーのCADデータではなく、実機を使った較正もしていない。定義した機能のうち786件は未対応で、ロボットが実機に触れる試験や実機での検証は済んでいない。チームは、認証されたデジタルツイン(実物の複製)ではなく、研究用の挙動モデルとして扱うよう求めている。
プログラムのライセンスはMITで、形状やデータはCC BY-NC 4.0(非商用)とする。データは約1.5GBで、チームは198台を3Dで見られるWebページも用意した。論文は公開の時点で公表されていない。