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電気自動車のバッテリーがより安く環境に優しく、カナダの大学が新製造法を開発

リチウムイオン電池の製造現場新技術により製造コストの削減と環境負荷の軽減が期待される画像出典元マックギル大学ニュースルーム

カナダのマックギル大学の研究チームが2025年7月11日、電気自動車や再生可能エネルギー貯蔵に使われるリチウムイオン電池をより安価で環境に優しく製造する新技術を開発したと発表した。この技術により、現在のバッテリー製造で問題となっている高価で調達困難なニッケルやコバルトを使わない電池の大量生産が可能になる。研究成果は科学誌Nature Communicationsに掲載された。

現在のリチウムイオン電池では、ニッケルやコバルトといった希少金属がバッテリーの性能を左右する重要な部分(カソード)に使われている。しかし、これらの金属は価格が高く、採掘による環境問題や倫理的な課題も指摘されている。研究チームは、これらの金属に代わる「DRX(無秩序岩塩型)」と呼ばれる材料構造に着目した。

DRX材料はこれまでも研究されていたが、粒子のサイズや品質を安定してコントロールすることが困難で、実用化には課題があった。研究チームはこの問題を解決するため、「2段階溶融塩プロセス」という新しい製造方法を開発した。

2倍の耐久性を実現

新しい製造プロセスでは、まず小さく均一な結晶の形成を促進し、次にその成長を制限することで、200ナノメートル以下の極小で高品質な粒子を作り出すことに成功した。この手法により、これまで必要だった粉砕や後処理の工程が不要になり、効率的な大量生産が可能になった。

研究を主導したJinhyuk Lee助教授は「我々の手法により、一定品質のDRXカソードの大量生産が可能になり、これは電気自動車や再生可能エネルギー貯蔵での採用に不可欠だ」と説明した。

実際のバッテリーセルでのテストでは、新材料を使用したバッテリーは100回の充放電サイクル後も85%の容量を維持した。これは従来の方法で作られたDRX粒子を使ったバッテリーの2倍以上の性能だ。

研究は、マックギル大学のチームがスタンフォード大学のSLAC国立加速器研究所や韓国科学技術院(KAIST)の科学者と共同で実施された。商業化を目指すアメリカのバッテリー企業Wildcat Discovery Technologiesも研究を支援している。

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マックギル大学ニュースリリース

FabScene編集部

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