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人間レベルの高速卓球プレイが可能なロボットシステム、MITが開発 88%の成功率でボールを時速40kmで打ち返す

画像出典元arXiv

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、人間の卓球プレイヤーに匹敵する高速・高精度でボールを打ち返すロボットシステムを開発した。このシステムは、飛来するボールの軌道をリアルタイムで予測し、様々な打法を再現しながら88%の成功率でボールを打ち返すことに成功している。

同研究は、MITバイオミメティックロボティクス研究所のDavid Nguyen氏、Kendrick Cancio氏、Sangbae Kim氏らによるもので、研究成果をまとめた論文がarXivで公開されている。

軽量・高トルクアームで実現した人間並みの反応速度

開発されたシステムの核となるのは、MITで開発されたヒューマノイドアームを改良した5自由度のロボットアームだ。このアームは総重量3kgと軽量でありながら、34Nmのピークトルクを発生するU10アクチュエーターを4基搭載している。低慣性設計により、エンドエフェクター部分で180〜300m/s²という高い加速度を実現している。

ボール追跡には、6台のOptiTrack Flex 13モーションキャプチャーカメラを使用し、再帰反射テープを巻いた卓球ボールを120Hzのフレームレートでサブミリメートル精度で追跡する。システム全体の反応時間は、新しいボール観測から実際のモーター制御まで7.5〜16msに抑えられている。

画像を表示 5自由度のロボットアームの関節構成軽量設計により高速動作を実現している画像出典元arXiv

多様な打法を高精度で再現

研究チームは、フォアハンドループ(トップスピン)、ドライブ(フラット)、チョップ(バックスピン)という3種類の基本的な打法を再現することに成功した。各打法での性能評価では、ループが88.4%、チョップが89.2%、ドライブが87.5%の成功率を記録している。

研究チームによれば、システムの最終目標は人間のトップレベルプレイヤーが達成する21〜25m/s(時速約75〜90km)というボールの打ち出し速度を達成することだ。今回の実験では平均11m/s(時速約40km)を達成し、最大では14m/s(時速約50km)での打ち返しも確認された。これは既存のロボット卓球システムを上回る性能だという。

システムの制御アルゴリズムには、モデル予測制御(MPC)を採用している。これにより、ボールの軌道予測が更新されるたびに、リアルタイムでスイング軌道を最適化し直すことができる。

研究チームは今後、より標準的な卓球ボールの使用や、より大きなワークスペースでの全面的なゲームプレイの実現を目指している。また、ボールのスピンを考慮した予測システムの改良や、ガントリー構造を使った動作範囲の拡張なども計画されている。

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FabScene編集部

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