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固体電池のショート原因は「強度不足」ではなかった、MITが通説を覆す新知見をNatureに発表

次世代バッテリーとして期待される固体電池には、長年解決できない問題がある。充放電を繰り返すうちに、電解質の内部にデンドライトと呼ばれる金属の針状突起が伸び、やがて電極間をショートさせてしまう現象だ。

デンドライトは「機械的なストレスによって電解質が割れて生じる」というのが長年の通説だった。そのため研究者たちは、より強固なセラミック電解質の開発に注力してきた。

MITの研究チームは2026年3月25日、この前提が誤りだった可能性を示す研究成果をNatureに発表した。デンドライトの成長をリアルタイムで直接観察できる新しい可視化手法を開発し、成長中のデンドライト周辺の応力を測定したところ、従来の機械的強度モデルが想定する閾値のわずか25%程度の低い応力でき裂が生じていた。つまりデンドライトは「電解質が弱いから伸びる」のではなく、「何らかの原因で電解質が動作中に脆くなるから伸びる」という構図が浮かび上がった。

論文の筆頭著者であるCole Fincher氏(MITマテリアルサイエンス工学専攻の博士課程)は「デンドライトが速く伸びるほど、周囲の応力は低い。電解質が動作中に脆化していた」と述べる。共同研究者のYet-Ming Chiang氏は「テスト台でのガラス強度が翌日には4分の1になっていた、というようなことが起きている」と表現した。

研究チームはクライオ走査透過型電子顕微鏡(クライオSTEM)でデンドライト周辺を分析し、高電流が電気化学的な腐食反応を引き起こして電解質を脆くするメカニズムを確認した。これは一部の研究者が仮説として提唱していたものだが、化学的要因と機械的応力の相互作用を実験データで直接示したのは今回が初めてだという。

この知見が示す方向性は明確だ。固体電池の開発において、機械的強度よりも「化学的安定性」を優先すべきという設計指針への転換だ。研究チームは今後、脆化を引き起こす電気化学反応の詳細解明を進める方針だ。

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FabScene編集部

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