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火星で生命の痕跡か?NASA探査車が発見した「ヒョウ柄の岩石」の正体

NASAの火星探査車「Perseverance」が、火星で生命が存在していた可能性を示す重要な発見をした。火星のジェゼロ・クレーターで採取した岩石から、古代の微生物が残した痕跡とみられる特徴的な模様を確認したと2025年1月22日に発表した。この研究結果は科学誌「Nature」に掲載された。

発見された岩石は「Cheyava Falls」と名付けられ、大きさは縦約1m、横約0.6mの矢じり型をしている。この岩石は、かつて火星に水が流れていた古い川の跡で見つかった。採取されたサンプルは「Sapphire Canyon」と呼ばれている。

今回発見されたのは「バイオシグネチャー」と呼ばれるもので、生き物が存在していた可能性を示す物質や構造のことを指す。ただし、バイオシグネチャーは生命の確実な証拠ではなく、生き物以外の原因でも作られる可能性があるため、慎重な検証が必要だ。

NASAのショーン・ダフィー代理長官は「この発見は火星で生命を発見することに最も近づいたものだ」と述べている。ただし、今回発見されたのは生命そのものではなく、生命が存在していた可能性を示す痕跡だ。確実に生命の証拠と言えるには、さらなる研究が必要とされている。

なぜ「ヒョウ柄」の模様が生命の証拠になるのか

探査車に搭載された精密な機器で岩石を調べたところ、表面に色とりどりの斑点模様が見つかった。さらに詳しく分析すると、この斑点は「ヒョウ柄模様」と呼ばれる特徴的なパターンを形成していることが分かった。

この模様は、ビビアナイトとグレイガイトという2つの鉄を多く含むミネラルでできている。地球では、ビビアナイトは沼地や腐った植物の周辺でよく見つかる。グレイガイトは、地球の微生物が作り出すことがある物質だ。

研究チームのリーダーであるストーニーブルック大学のジョエル・ハロヴィッツ氏は「この岩石の化学成分は、微生物がエネルギーを得るのに適した環境だった」と説明している。つまり、もし火星に微生物がいたとすれば、この岩石の成分を「食べ物」として使い、生活していた可能性があるということだ。

ただし、これらの物質は生き物がいなくても作られる可能性がある。非常に高い温度や強い酸性の環境でも同じような模様ができることがある。しかし、今回調べた岩石には、そうした極端な環境にさらされた形跡は見つからなかった。

この発見で特に興味深いのは、比較的新しい時代の岩石から生命の痕跡が見つかったことだ。これまでは、火星の生命の証拠はもっと古い岩石からしか見つからないと考えられていた。今回の発見により、火星は思っていたよりも長い期間、生き物が住める環境だった可能性が出てきた。

「Sapphire Canyon」は、探査車が2021年2月に火星に到着してから集めた27個の岩石サンプルの1つ。これらのサンプルは将来、地球に持ち帰られて詳しく調べられる予定だ。探査車には気象観測装置や、将来の宇宙飛行士が着る宇宙服の素材テストも積まれている。

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FabScene編集部

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