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タフツ大学とハーバードが神経系を自ら組み上げる生体ロボット「ニューロボット」を開発

タフツ大学とハーバード大学ワイス研究所の研究チームが、カエルの胚細胞だけで構成され、内部に神経回路を自ら組み上げる生体ロボット「ニューロボット」を開発した。研究成果はAdvanced Scienceに掲載された(DOI: 10.1002/advs.202508967)。

研究の出発点は「バイオボット」と呼ばれる生体ロボットだ。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の胚から取り出した皮膚前駆細胞を培養皿に置くと、数十分で球形の構造体に自己組織化し、表面の繊毛(シリア)を協調させて水中を移動する。遺伝子操作は一切不要で、胚に蓄積された栄養分だけを使いながら9〜10日間生存する。

今回のニューロボットは、このバイオボットが球形に収縮する約30分の「ヒーリング期間」に、別の胚から採取した神経前駆細胞をマイクロ手術で内部に注入して作られた。注入した細胞はニューロンに分化し、軸索と樹状突起をボット全体に伸ばし、表面の繊毛細胞へも突起を延ばした。

神経系が組み込まれた結果、バイオボットとは形態が変化し、繊毛の発現パターンが異なり、活動量が増加した。遺伝子発現の解析では光受容体関連の遺伝子が上方制御されており、リードオーサーのHaleh Fotowat氏(ワイス研究所上席科学者)はニューロボットが将来的に視覚能力を獲得する可能性を示唆している。

神経系が本当に機能しているかを確かめるため、研究チームはGABAA受容体を阻害してニューロンを過活性化させる薬剤(ペンチレンテトラゾール)で処理する実験も行った。神経細胞を持たないバイオボットはこの薬剤で動きが低下したが、ニューロボットは動きが増加または変化するものがあり、神経活動が運動に影響を与えていることが示された。

研究を主導したタフツ大学のMichael Levin氏は「この試みが問うのは、自然選択の産物ではまったくない文脈でも神経系が自己組織化できるか、という根本的な問いだ」と説明する。将来的には組織修復や環境モニタリングへの応用が期待されているが、Levin氏は現時点では基礎的な自己組織化の理解が主目的だと述べている。

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FabScene編集部

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